旧ソ連の宇宙船ソユーズの船長は、サハラ砂漠で巻き上げられたオレンジ色の雲が、気流でフィリピン上空まで運ばれるのを見たという。雲は地上に雨を降らせる。宇宙からその光景を見た時、彼は悟ったという。「地球人はみんな同じ船で旅をしているのだ」▼そのサハラ砂漠の中にあるアルジェリアのガス生産施設で起きた人質事件は、最悪の結末になった。アルジェリア軍がイスラム武装勢力の掃討に踏み切り、三日間の軍事作戦で人質二十三人超が死亡したという▼プラント建設大手日揮の日本人駐在員十人の安否がなお不明だ。「八人の日本人の遺体が病院にある」「日本人が殺されるのを見た」。断片的に伝わる情報に家族は身を裂かれるような思いだろう▼関連国への事前通告もないまま、性急に軍事作戦に踏み切ったアルジェリア政府の姿勢には疑問が残るが、目的達成のために人の命を「手段」にすることは絶対に許されない▼ソユーズの乗組員は「宇宙から見た地球はたとえようもなく美しかった。国境の傷痕などは、どこにも見あたらなかった」と語っている(高井次郎著『魂を熱くさせる宇宙飛行士100の言葉』)▼アフリカ諸国を区切る直線的な国境線は西欧の植民地支配の名残だ。テロ組織は民衆の貧しさに付け込もうとしている。飢餓や災害に苦しむ人々を支援するのは全世界の責任である。