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命の重さは同じでも、悲しいかな、その量り方は一様でないらしい。アルジェリアの天然ガス施設へのテロ事件は、政府軍の性急な作戦により、日本人を含むとみられる人質20人以上が亡くなる惨事となった。企業戦士らの受難に言葉もない▼国情を知り尽くす会社でも、異国の辺境で働くからには危険がつきもの。商いとはいえ、現地に良かれとの思いが士気を支えてもいただろう。それぞれ息子で、夫で、父でもあった命が、乱暴に「外国人人質」とくくられ、砂漠に消えた▼約10カ国にまたがるサハラ砂漠は、アフリカの3分の1、中国ほどの広さがある。人類の知恵と根気を試すように、熱砂の下には豊かな資源が眠る。幸いの、そして、災いのもとである▼北アフリカから中東に及ぶ「アラブの春」。体制のタガが緩み、砂漠はテロリストの楽園と化しているそうだ。金づるは誘拐の身代金、麻薬や武器の密輸と聞く。イスラム武装組織の実体は、聖戦をかたる山賊といえる▼無法者に対するのは、基幹産業と威信を守りたい国家。冷たい歯車二つに巻き込まれた生身は、どうにも無力だ。人質を無視したかのような制圧劇は、人命より重いものがある国の現実を語る▼30人を超す武装勢力も殺された。同情の余地はないが、憎しみは彼らの肉親に受け継がれ、国境をまたいで報復の連鎖が始まろう。背景には深い貧困と、天然資源を民の幸せに生かせない失政がある。出口なき混迷に、サハラを渡る熱風のような焦燥が募る。