一九九五年の阪神大震災から十八年になった。大都市を襲う震災では、建物の倒壊や火災が、大きな犠牲者を出す。神戸の悲劇の教訓から学び、建物の耐震化や不燃化の改修を急ピッチで進めたい。
阪神大震災で亡くなったのは、六千四百三十四人にのぼる。犠牲者の大半は、倒壊した家や家具などの下になった圧死だった。
耐震基準は八一年に改められており、それ以前の古い建築物が多く倒壊した。
国土交通省によれば、年々、新基準の建物の比率が高まっており、一般住宅では二〇〇八年段階で、約79%が「耐震性あり」と推計されている。
問題なのは、八一年以前に建てられた全国のオフィスビルなど約十五万棟を同省が調べたところ、耐震性に適合するのは約44%しかなかったことだ。大地震がきたら、倒壊し、多数の犠牲者を出し、道路をふさぐ恐れがある。
病院や学校、デパート、ホテルなど、特定建築物と呼ばれる大規模施設の耐震化を進めることは必須だ。〇三年の時点で、約三十六万棟のうち、約九万棟が古い耐震基準のままで改修が済んでいなかった。同省は一五年までに、それを四万棟へ減らす目標を掲げているものの、〇八年段階で、未改修の建物は約八万棟にものぼった。スピードが遅すぎる。
大規模施設は避難所にしたり、帰宅困難者を一時的に収容できる拠点になりうるだけに、迅速に改修せねばならない。耐震改修する補助の割合をさらに高めるのも、迅速化の一案だろう。
東京湾北部で大地震が起きると、最悪で約十二万棟が倒壊し、火災による住宅被害は約十九万棟に達する恐れがある。南海トラフで起きる巨大地震では、名古屋や大阪がダメージを受け、最悪の場合、三十二万人超の犠牲者が出ると予想が出ている。
不燃化対策も急がれる。主要道路に面する建物を鉄筋コンクリートにするなどして、延焼を遮断するエリアをつくる。建て替えのときは、燃えにくい住宅とする…。壊れない、燃えない町づくりが欠かせない。
自宅や勤務先で、どう避難するか、ソフト面の重要さももちろんだ。被害が広域化すればするほど、交通網は遮断され、物流は止まる。通信も途絶しよう。被災者は水や食料などの不足にさいなまれる。さまざまな複合災害が待ち構える。都市型災害への備えをあらためて総点検すべきだ。
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