日米の運輸当局が、トラブル続きの米ボーイング社製「787」に運航停止を命令した。多くの日本メーカーが技術を注いだ「準国産機」だ。信頼回復に向け、いま一度総力を挙げてほしい。
世界でいち早く、一昨年秋から日本の航空会社に登場した最新鋭の中型旅客機ボーイング787は「ドリームライナー(夢の旅客機)」の愛称で呼ばれてきた。
金属より軽くて強い炭素繊維複合材を機体に用いたことで、航空会社にとっては燃費が二割も向上し、乗客には快適な乗り心地になったためだ。機体の強度が増すと機内の気圧を従来よりも高くできるので、耳が痛くなるのを防げるとともに、疲労感も軽くなる。「乳児が泣かない」ともいわれ、わざわざ787を選ぶ乗客が多く、全日本空輸や日本航空は今後の主力機と位置付け、計百機以上も発注している。
しかし、ハイテク機ゆえに開発段階からトラブルが頻発していた。一号機の納入は予定より三年も遅れた。就航後も米国ボストンの空港に駐機中の日航機でバッテリーから出火したり、離陸前に燃料漏れが見つかるなど全日空、日航合わせて十件以上のトラブルが発生した。
新型機の導入時は、ある程度の初期不良が起こるのはやむを得ないと専門家はいう。しかし、それまでとは違い、飛行中にトラブルが起きて高松空港に緊急着陸した十六日の全日空機のケースは、一つ間違えば大惨事になっていた。遅きに失した感もあるが、日米当局による運航停止命令は当然であろう。
すでに世界の航空会社から八百機以上の受注があるといい、機体の設計から製造までを含め原因を徹底的に調べ上げ、万全な安全体制を確立する必要がある。
この最新鋭機を支えてきたのは、日本のものづくりの力だ。東レが炭素繊維複合材を開発し、三菱重工業が主翼、川崎重工は前胴部など、富士重工は主翼と胴体をつなぐ中央翼を造る。過熱したリチウムイオン電池はGSユアサ製など、日本企業の製造比率は35%に及んでいる。
大切なのは、こうした日本の最新技術への信頼が、今後も揺らぐことのないようにすることだ。ボーイング・ジャパンは機体部品に問題はないとしている。だとしても、細心の注意を払いたい。不断の見直しを続け、持ち前の「カイゼン」につなげてきたのが、日本のものづくり発展の礎だからだ。
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