アルジェリアで起きた日本人らの人質事件では、同国軍が攻撃したという。人質の安否が心配だ。日本政府は関係国とともに解決、対策へ向けて全力を尽くしてほしい。
情報はなお錯綜(さくそう)しているが、横浜に本社を置くプラント建設大手「日揮」の社員らが、同じガス田で欧米人とともに、イスラム武装勢力の襲撃を受け、人質になっていた。
日本政府の対応は素早かった。首相指示にあるように人命第一、情報収集、関係国との連携をしっかりやり遂げてほしい。それには正確な情報の収集が出発点になる。
とりわけアルジェリアの旧宗主国で今も関係の深いフランス、また北アフリカで対テロ対策を行ってきた米国とは協調的行動が必要になる。
アルジェリアでは、一九九〇年代、選挙で勝ったイスラム勢力を軍部が徹底して弾圧し、十万人を超す死者を出している。血を血で洗う内戦状態は、過激派を生み、武器の流入を活発にした。
その後、誕生した文民政権に対し、多くは和解したが、拒否した武装勢力もあった。のちに国際テロ組織アルカイダと連携する「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」で米国務省はテロ組織に指定している。今回の事件への関与が疑われている。
米国は9・11以降、世界的なテロとの戦い、テロの根絶を目指している。アフガニスタンやイラクの戦争はその典型だが、北アフリカでも数年来進めてきている。
アフガニスタンで治安部隊を訓練しているように、米軍が現地の正規軍を訓練し、それにその地域のイスラム武装勢力を掃討させるという方法だ。
それはマリでも実施されたが、鍛えたはずの軍の一部が何と寝返った。マリの北半分が奪われたので、あわてて仏軍が空爆をしたというのが、どうも実相らしい。
エジプトなどで長期独裁政権を倒した「アラブの春」に世界は驚いた。イスラムの民衆が、欧米の支える独裁政権に苦しめられてきた構造もよく分かった。
人質をとるのは、いやしむべき犯罪である。まして身代金目的であれば、それこそイスラム世界の人々がまゆをひそめる行為ではないか。
各地の武装組織の解体こそは、イスラム世界と非イスラム世界との無用の分断を避ける道でもある。
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