HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 65034 Content-Type: text/html ETag: "9fcb3f-19d9-44287d00" Cache-Control: max-age=1 Expires: Sat, 19 Jan 2013 03:21:06 GMT Date: Sat, 19 Jan 2013 03:21:05 GMT Connection: close
「星の王子さま」を書いたサンテグジュペリは飛行機乗りでもあった。サハラ砂漠に不時着し、奇跡の生還をした体験をつづった「人間の土地」で戦争について述べている。「なぜ憎みあうのか? ぼくらは同じ地球によって運ばれる連帯責任者だ、同じ船の乗組員だ」▼そして「新しい総合を生み出すために、各種の文化が対立することはいいことかもしれないが……憎みあうにいたっては言語道断だ」(新潮文庫)。しかし、彼が空を翔(か)けた北アフリカの現状はそのヒューマニズムから遠い▼アルジェリアの人質事件は、イスラム武装勢力がむき出しの獰猛(どうもう)さで牙をむいた。軍は急襲に打って出たが、人質救出作戦なのか過激派殲滅(せんめつ)作戦なのか。手荒く攻め急いだと思(おぼ)しき情報の片々が、現地から伝わってくる▼この国では1990年代の内戦で10万人以上が落命したという。互いの遺恨は深い。近年は近隣国の治安も危うく、砂漠を走る「パリ・ダカールラリー」は南米に舞台を移した▼犯行グループは隣国マリへの仏軍の介入停止を求めていた。サハラ周辺の国々の旧宗主国フランスは、サンテグジュペリの母国でもある。この人はスペイン内戦を取材中に民兵らの手に落ちたことがある。命がルーレットに弄(もてあそ)ばれていると感じたそうだ▼生きて戻れたのは彼我(ひが)の間に「人間に対する敬意」が取り戻されたからだと書き残した。アルジェリアからの情報は厳しさを増している。一人ひとりの無事を祈るしかないのが、もどかしい。