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世界初のジェット旅客機は英国で作られ、「コメット」と呼ばれた。1952年に華々しく就航したが、2年後に不可解な連続空中分解事故を起こす。原因はわからず、謎につつまれた▼徹底した調査で、金属疲労が浮かび上がる。高い空を飛ぶジェット機は客室に与圧し、着陸すれば戻して「膨らんでは縮む」ことを繰り返す。音速に近い高速もあって機体に負担がかかり、惨事に至ったのだった。技術が未知の領域に踏み込むときのリスクとして、語り継がれる話である▼新鋭機にとっては、あらゆるものが「未知の領域」になる。試験飛行を重ねて改善を加え、何年もかけて就航させる。それでも初期故障は出るものだが、ボーイング787は度を超して目立ち、安全性に黄信号がともった▼高松空港に緊急着陸し、緊急脱出した129人は青くなったに違いない。非常のとき車や鉄道なら停止できるが、飛行機は空で止まれない。全機運航停止は当然の措置だろう▼空を飛ぶという発想は、もし自然界に鳥がいなかったら、湧かなかったかもしれない。飛ぶ鳥の出現は1億年よりも前という。長い長い時間をかけて飛行を研ぎ澄ましてきた。片や人間は、引力に逆らう技術を手にしてたった百余年である▼コメットの事故のとき、英首相チャーチルは「謎の究明のためには費用のことも手間のことも考えるな」と言ったそうだ。鳥ならぬ空の新参者、ここは謙虚に、徹底して、新鋭機を調べ直したい。安全を万全に高めてほしい。