働く女性の男性との賃金格差が解消しない。社会の一線で働きたいと考えながら出産を機に退職する女性も少なくない。女性の低賃金は将来の低年金にもつながる。是正に取り組むべきだ。
韓国に初の女性大統領が誕生する。今後は女性の社会進出にも関心が高まるだろう。
一方、安倍政権では党三役と閣僚に四人の女性が起用されたが、衆院選で当選した女性は三十八人で全体の7・9%だ。解散前より減った。指導的立場で活躍する女性の比率を二〇二〇年までに30%にする政府目標には程遠い。
賃金の格差もある。選挙直後に経済協力開発機構(OECD)が発表した報告書では、子育てしながら働く女性と男性の格差は比較できる三十カ国中最大だった。
厚生労働省によると、正社員では女性の賃金は男性の約七割程度しかない。男性に比べ管理職が少なかったり、出産などで辞めてしまうため勤続年数が短いからだ。
しかも一度退職すると正社員の再就職先は限られる。多くが非正規雇用になりがちである。OECDも「職場復帰を望んでも難しいため、低賃金の職に追いやられてしまう」と指摘している。この雇用環境も賃金格差の原因だ。
働く女性の二人に一人は第一子出産の前後に退職している。その割合は以前より減ったが、うち四割弱が仕事と子育ての両立が難しく断念している。さらに問題なのは、解雇されたり退職を勧められた人が一割いることである。
「使いづらいから辞めてもらう」では人材の生かし方が間違っている。出産や育児を抱える女性を戦力とみないことは許されない。
低賃金では納める年金保険料も低く低年金や高齢後の貧困につながる。人口減の社会では女性も重要な労働力だし、社会保障の支え手でもある。企業は仕事と子育てを両立させ女性を貴重な戦力に育てることに知恵を絞るべきだ。
取得率が2%と低い父親の育児休業を取りやすくすれば、妻は働きやすくなる。企業には男性の長時間労働を減らし短時間勤務など働き方の多様化を進める責任がある。育休がハンディにならない人事評価や昇給・昇格基準の明確化も求められている。非正規雇用の待遇改善も課題である。
日本が世界最速で進む少子高齢化社会をどう乗り切るか国際社会は注視している。国は男女間の格差をなくし、女性が能力を発揮できる社会の実現を目指すべきだ。
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