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年を重ねると、月日の流れがどんどん速くなる。楽しい時が駆け足なのは常としても、退屈な時間まで大股である。物の本によれば「心の時計」のせいらしい▼子どもには未知の行事や出来事が次々と訪れ、心の時は細かく刻まれる。だから時間がゆっくり進むように感じる。大人になると胸躍るイベントが減り、加齢で代謝も鈍り、心の時計は緩慢になる。つまり実際の時の流れを速く感じる、というわけだ▼新成人はどんな時を刻んできたのだろう。生を受けた1992年度は、バブル後の不況が鮮明になる時期。ゆったり流れた「子ども時間」は、世に言う「失われた20年」に重なる。その不遇を、彼らは負担増として実感するのかもしれない▼「大人になるということは、歴史と出会うこと。歴史に出会うとは、社会を見いだすことでもある」。そう説くのは、社会学者の佐藤健二さんだ。過去を感じ直し、現在を位置づけ直し、未来を選び直す。自分がどんな歴史に織り込まれているのかを問う営みだという▼20歳の救いは、未来を選び直せることである。衆院選で初の一票を投じた人もいよう。夏の参院選では皆が投票できる。進んで社会と関わり、もの言う大人になってほしい▼失われた歳月を経て、国の借金は1千兆円に迫る。あずかり知らない重荷を背負わせるのは忍びないが、新成人は引き換えに、自らの暮らし向きや国の将来を左右する権利を手にする。その使いよう一つで、「大人時間」はいくらでも密になる。