日本と韓国の新政権発足に伴い、まず議員交流が動きだした。歴史認識で争うだけでは展望は開けない。東アジアの安全保障、経済協力にも視野を広げた新しい議員外交の道筋をつけるべきだ。
韓日議員連盟会長で与党セヌリ党の黄祐呂代表が来日し、安倍晋三首相と面談した。首相は「両国にはさまざまな課題があるが、一番頼りになるのは議連同士の交流だ」と強調した。
これに先立ち、日韓議員連盟幹事長である自民党の額賀福志郎元財務相らが訪韓し、朴槿恵・次期大統領と会談した。
年明けとともに、機能不全に陥っていた議連の立て直しがようやく始まったといえよう。
昨年からの関係悪化は、議連の影響力が落ちたことも大きな要因だった。それまで日本とのパイプ役だった李相得議員が不正政治資金の授受で逮捕された。李明博大統領の実兄。複数の外交筋は、李議員が健在だったら大統領の島根県・竹島(韓国名・独島)上陸を止めたはずだと声をそろえる。
日本側も対応できなかった。民主党政権になり議連会長には同党の渡部恒三元衆院副議長が就任したが、韓国との縁はほとんどなかった。
かつては、両国の対立が深まったときには議員外交で回避したことがたびたびあった。
二〇〇六年、竹島周辺の排他的経済水域(EEZ)測量をめぐり関係は緊迫したが、韓国の議員が当時の森喜朗会長に書簡を送って沈静化が図られたという。
十数年前までは韓国議員の多くが日本語ができた。意思疎通ができ人脈も豊かだった。今は政治家の世代交代が進んでいるが、議員外交には今後も、対立を解く調整役が求められる。対話ルートを絶やさず、懸案があればいつでも相互に訪問する積極性が必要だ。
日韓の議連が取り組むべき課題は、竹島領有や元従軍慰安婦問題に加えて、北朝鮮の核、ミサイル開発への対応や日中韓自由貿易協定(FTA)交渉など多様な問題がある。
互いの見解を聞き、事実に基づいた主張を展開しながら、新しい時代に即した議員外交の姿をともに考えなくてはならない。
先月の韓国大統領選で最大の争点になったのは、所得格差や若年層の失業、少子高齢化だった。両国議員には日韓共通の問題を考える自治体や研究者、若者たちの非政府組織(NGO)の交流を促す仕事も望みたい。
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