年末年始、東京の鉄道の車内や駅で妙なポスターが目についた。二〇二〇年の夏季五輪を東京に招致できたら、これをやります、というスポーツ選手やタレントの決意表明である▼<招致できたら、銀座のホコ天でサッカーの試合をやっちゃいます>(女子サッカーの澤穂希選手)<8年後、止められても出ます>(女子レスリングの吉田沙保里選手)はともかく、テリー伊藤さんの<欧米人に負けないよう、胸毛を植毛します>は笑えないギャグだ▼九月に結論が出る招致レースはいよいよ本番に突入した。二〇年の五輪開催を目指す招致委員会はきのう、猪瀬直樹都知事らが記者会見し、開催計画を説明する「立候補ファイル」を公表した▼最大のライバルはイスタンブール(トルコ)。「イスラム圏で初の開催」という大義名分はかなり手ごわい。東京は選手村から半径八キロ圏内に競技会場の85%を収めるなど、費用を抑えたコンパクトな五輪を打ち出した▼開催意義として、東日本大震災からの復興は以前ほど強調してはいないが、サッカー一次リーグを宮城県のスタジアムでも実施するという▼<東京招致を実現させて、スポーツのチカラで日本の子ども達を元気にします>。猪瀬知事は招致ポスターでそう誓っていた。今回も最大の課題は世論の支持である。あのポスターが逆効果にならなければよいのだけれど。