二〇二〇年夏季五輪開催をめぐる国際招致合戦が本番を迎えた。一六年招致に失敗した東京は国内支持率が低調だ。なぜ再び東京なのか。その魅力を説得力のある言葉で語らねば機運は高まるまい。
東京の招致委員会は開催計画をまとめた立候補ファイルを国際オリンピック委員会(IOC)に出し、公表した。ライバル都市はイスタンブール(トルコ)とマドリード(スペイン)。九月七日のIOC総会で開催都市が決まる。
東京の街角では「今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ。」のうたい文句が目立つ。だが、なぜ必要なのか伝わらない。そこに招致合戦を勝ち抜く鍵が潜んでいるのではないか。
東京の開催計画の特徴は、半径八キロ圏内に競技会場の八割を収めるコンパクトさだ。選手の負担を軽くする気配りでもあり、一六年五輪の招致のときも好評だった。
ところが、足元の支持率が低迷している。昨年五月に公表されたIOC調査ではイスタンブールの73%、マドリードの78%と比べて東京は47%と大きく下回った。
右肩上がりの成長を誇った一九六〇年代とは異なる。比類のない速さで高齢化が進む日本にとって、六四年に続く東京五輪にどんな意義があるのか。内外にしっかりと訴えねばならないだろう。
およそ三兆円の経済効果をもたらし、十五万人以上の雇用を生み出すと試算されている。日本を覆う閉塞(へいそく)感を首都東京から打ち破る機会となるかもしれない。
呼び込んだ投資を刹那的な事業にばかり費やしては元も子もない。首都直下地震への備えや、高齢者や障害者、外国人に優しいユニバーサルデザインの街づくりにつなげる知恵と工夫がほしい。
東日本大震災からの復興支援の視点も肝要だ。聖火ランナーが被災地を巡り、宮城県でサッカー予選を行うだけでは物足りない。
東京と被災地が一体となって産業や観光、文化を育て、スポーツや国際交流を振興する仕組みが欠かせない。原発事故を収束させて除染を急ぐ。原発に頼らず省エネや再生エネを中心に電力を賄えば再生の象徴となるだろう。
財政危機にあえぐマドリードよりも、イスラム圏初の五輪を目指すイスタンブールが手ごわい。東京は前回、南米初を掲げたリオデジャネイロ(ブラジル)に敗れてもいる。
成熟社会のあるべき姿を世界に先駆けて表現する。二度目の東京五輪の強みはそこにこそある。
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