HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 53549 Content-Type: text/html ETag: "ae5f2-1ee9-4d2b52b7dd9cd" Expires: Mon, 07 Jan 2013 21:21:04 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Mon, 07 Jan 2013 21:21:04 GMT Connection: close エネルギー戦略 現実的な原発政策を推進せよ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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エネルギー戦略 現実的な原発政策を推進せよ(1月8日付・読売社説)

 ◆政府は再稼働の準備を着実に◆

 日本経済の再生には、電力の安定供給が欠かせない。国家の命運がかかったエネルギー・原子力政策を、抜本的に再構築する重要な1年だ。

 安倍首相は、「2030年代に原発稼働ゼロ」を目指す民主党政権の革新的エネルギー・環境戦略の見直しや、安全性を高めた原発の新設に意欲を示している。妥当な認識と言えよう。

 政府は、原発を含む多様な電源の活用を盛り込んだ現実的なエネルギー戦略を、速やかに打ち出すべきである。

 ◆安定供給の回復が急務◆

 東京電力福島第一原発のような重大事故は再び起こしてはならない。とはいえ、性急に脱原発へとカジを切れば、資源小国の日本は電力不足で経済や国民生活に重大な打撃を受ける。

 全原発50基のうち稼働中は関西電力大飯原発の2基に過ぎない。大停電こそ起きていないが、綱渡りの電力供給が続く。「原発なしでも電気は足りている」という脱原発派の主張はあたらない。

 茂木経済産業相が「原子力規制委員会が安全性を確認した原発は、政府の責任で再稼働を進める」と述べたのは心強い。

 ただし、規制委の審査は、新たな安全基準ができる今夏以降となる。政府はそれまでの期間を空費せず、地元との信頼醸成や、遅滞なく再稼働する手順作りなど、入念な準備を怠ってはならない。

 原発の代わりに、老朽化した火力発電所まで動員しているため、液化天然ガス(LNG)などの燃料費は年3兆円も増えた。

 電力会社がリストラでコスト削減に努めるのは当然としても、限界はある。昨年4月から東電が料金値上げを開始し、関西、九州の2電力も今春からの値上げを政府に申請している。

 鋳物の街・埼玉県川口市の商工会議所が昨秋、会員の中小・零細企業に電気料金値上げの影響を聞いたところ、4社に1社が「経営が立ち行かなくなる」「多大な影響を受ける」と答えた。

 2013年度中に原発を再稼働できないと、東電などがさらなる値上げを迫られる恐れが強い。中小企業の大量倒産・廃業による雇用危機が現実味を増す。

 ◆再生エネ過信は禁物◆

 政府試算では「原発ゼロ」にすると電気代は2倍になる。家計の負担も大きい。普段から節約している低所得世帯は節電の余地が少ない。弱者ほど脱原発による痛みが強いことにも留意したい。

 原発の代替電源として太陽光や風力など再生可能エネルギーへの期待は大きい。だが、現時点では主要電源に成長する展望が見えない。天候などによって発電量は不安定で、コストも高い。

 特に問題なのが、普及促進のため昨年7月に導入した再生エネ発電の「固定価格買い取り制度」である。確かに太陽光発電は拡大したが、買い取り費用は電気料金に上乗せされ、利用者負担が増える仕組みだからだ。

 先行するドイツでは買い取り費用が膨らみ、家庭の電気代が倍増した。ドイツより日本の買い取り価格は約2倍も高い。電気料金の急騰を防ぐため、政府は買い取り価格を引き下げるべきだ。

 民主党政権の迷走に振り回され、原発立地自治体は国の原子力政策への不信感を強めた。

 これまでの失政をどう軌道修正するのか、政府が自治体側に丁寧に説明することが重要だ。

 安全審査の厳格化で、早期の廃炉を迫られる原発も出かねない。雇用対策や新たな地域振興などでも特段の配慮が求められる。

 原子力損害賠償法(原賠法)は、原発事故の賠償責任をすべて電力会社に負わせている。これも国の原子力政策の信頼を低下させる一因だ。野田政権が先送りした原賠法の見直しを急ぐ必要がある。

 福島原発事故の除染・廃炉の総費用は不明だが、東電だけで全額を払えないのは明らかだ。新たな支援策作りも課題となろう。

 ◆技術磨き国際貢献を◆

 重要なのは、原子力の安全を支える人材確保だ。現場管理を担ってきた電力会社や関連企業の熟練作業員が他の仕事に転じれば、原発再稼働などに支障が生じる。

 核燃料サイクル継続を含めた原子力政策の将来戦略を明示しないと、原子力分野への志望者もいなくなり、技術の維持・継承は困難だ。核廃棄物の最終処分という宿題も自力で解決できなくなる。

 新興国では原発の新増設が相次いでいる。日本が技術を高め、自然災害はもちろん事故やテロにも強い安全な原発を作ることが、正しい国際貢献の道と言えよう。

2013年1月8日01時15分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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