HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 07 Jan 2013 20:22:45 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞: 想像するのも難しいが、少し考えてみていただきたい。あなた…:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 筆洗 > 記事

ここから本文

【コラム】

筆洗

 想像するのも難しいが、少し考えてみていただきたい。あなたは独裁政権によって、あらぬ罪を着せられ、死刑判決を受けた。重い病にも苦しんでいる▼監禁先の病院を突然、外国人が訪れて言う。「ここに、あなたを死刑にするなという趣旨で、世界中から集めた署名があります」。地獄に垂らされた糸を見る思いになるだろうか。いずれにせよ冷静ではいられないはずだ▼反骨の哲学者・鶴見俊輔さん(90)が言っている。「もし私だったら、サンキュー、サンキューぐらいが関の山でしょう」。だが、その無実の死刑囚は違った。彼は思わぬ訪問者に驚きつつも片言の英語でこう語ったという▼「あなたたちの運動は、私を助けることはできないだろう。しかし私は、あなたたちの運動を助けるために、署名に参加する」▼鶴見さんが一九七〇年代、独裁政権下の韓国を訪れた時に、体験した話だ。どんなに絶望的な状況でも、冷静に、こびずへつらわず、礼儀と相手を思いやる心を忘れない。この死刑囚こそ、韓国民主化運動を象徴する抵抗詩人・金芝河(キムジハ)さん(71)であった(鶴見俊輔著『戦争が遺(のこ)したもの』)▼その詩人が死刑宣告から三十九年ぶりに、再審で無罪を勝ち取った。かつて自分を弾圧した朴正熙(パクチョンヒ)大統領の娘、朴槿恵(パククネ)さんが新大統領に選ばれた直後の無罪判決。怨讐(おんしゅう)から和解へ。時代の針が進んだのだろう。

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo