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大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去50日間分の天声人語のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。
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近所の資源ごみ置き場に、和洋の酒瓶が山と積まれていた。わが家にも動かぬ証拠が10本ほど転がる。宴(うたげ)の果てといえば美しいが、中身の行方を思うと切ない。曜日の配列に恵まれた年末年始、飲み食いでふやけた向きは多かろう▼ご同輩、ひと区切りつけるなら本日の七草粥(がゆ)である。年をまたいで酷使した臓器をねぎらい、無病息災を願う。白地に緑は目にも優しく、罪滅ぼしの青菜は蕪(かぶ)か大根で足る。淡泊な甘みを確かめたら、つくだ煮など濃いめの味を添えてみたい▼作家の井上荒野(あれの)さんは独り暮らしを始めた頃、粥と煮魚で大人を自覚したという。残った煮汁にワカメをくぐらせ、白粥に盛る。「元気なときに食べてもおいしいものだとわかった」と、本紙「作家の口福(こうふく)」に記している▼そう、ごちそうはカニやマグロだけではない……と納得していたら、築地市場の初競りで大きな本マグロに1億5540万円がついた。キロ70万円、新春のご祝儀では説明できぬ相場らしい▼「マグロに高値がつくとワクワクするでしょう」。香港の同業に競り勝ったすしチェーン社長は、景気回復への思いを語った。宣伝の散財にしても華やぐ話題ではある。ただ、三が日の延長戦のような美食三昧(ざんまい)は、鉄の胃を持つ人にお任せしよう▼ささやかながら当方、空き瓶を転がして内需には貢献している。ここは大トロの誘惑に負けず、過日の飽食を反省したい。身に染みる朝粥のうまさは、いわば健康ゆえのぜいたく、ありがたいことである。