HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 53540 Content-Type: text/html ETag: "cf7af-1f6f-4d264c0d82fde" Expires: Thu, 03 Jan 2013 21:21:05 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Thu, 03 Jan 2013 21:21:05 GMT Connection: close 試練の世界経済 欧州危機の収束はまだ途上だ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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試練の世界経済 欧州危機の収束はまだ途上だ(1月4日付・読売社説)

 ◆財政再建緩めずに「統合深化」を◆

 長期化している欧州の財政・金融危機は、最悪期を脱したかのように見えるが、先行きは不透明である。世界経済の試練が今年も続くだろう。

 欧州危機を封じ込め、本格的な景気回復を実現しなければならない。

 国際通貨基金(IMF)は昨秋、2013年の世界経済見通しを実質3・6%成長に下方修正した。緩慢な回復にとどまりそうだ。

 最大の要因は、ユーロ圏が前年比0・2%増とほぼゼロ成長に低迷することだ。2年連続でマイナス成長に陥る観測すらある。

 ◆負の連鎖を断ち切れ◆

 3年以上続く欧州危機は、米国や日本経済に悪影響を及ぼし、中国の欧州向け輸出が減少するなど新興国経済も減速させた。

 こうした「負の連鎖」を断ち切らない限り、世界経済が再浮上する展望は開けない。

 欧州中央銀行(ECB)と欧州連合(EU)が昨秋から年末にかけ、遅ればせながら、危機封じ込め策を強化したのは前進だ。

 ECBは大胆な金融緩和策に加えて、危機国の国債を無制限に買い取るという異例の方針を決めた。

 危機国支援の恒久的な安全網として欧州安定メカニズム(ESM)も発足した。ギリシャに対する追加支援も実施された。

 信用不安が和らぎ、市場が落ち着いてきたことは評価できる。

 だが、「ユーロ危機は終わった」と楽観するのは禁物だ。

 ギリシャは深刻な景気後退から抜け出せない。計画通りに政府債務を削減する道は険しい。

 スペインでも、不動産バブル崩壊で銀行が不良債権を抱え、国家財政は悪化した。EUへの支援要請を躊躇(ちゅうちょ)しているのは問題だ。

 イタリアで財政再建を主導してきたモンティ首相が辞意を表明したため、2月に実施される総選挙も波乱要素になりうる。

 各国がここで対応を緩めるのは愚策だ。危機が再燃しないよう、財政再建を着実に進め、支援の枠組みを活用するとともに、景気を重視する政策も肝要である。

 「通貨は一つで財政はバラバラ」という構造問題の解決へ、ユーロ圏は「統合深化」の取り組みを足踏みさせてはならない。

 域内の銀行監督を一元化する方針は決まったが、財政統合の具体策は先送りされている。カギを握るのは大国ドイツの決断だ。

 ドイツでは、財政危機に陥った南欧諸国への一層の支援や財政統合に反対論が根強い。

 ユーロ圏が統合深化にさらに踏み込めるかどうかは、今秋のドイツの総選挙が焦点になる。

 2期目がスタートするオバマ米大統領にとって、引き続き、財政再建と経済再生が重い課題だ。

 ◆回避された米財政の崖◆

 大型減税失効と予算の強制削減が重なる「財政の崖」を巡る大統領と議会の協議は、越年した末、中間所得層の減税延長や富裕層増税などでようやく決着した。

 崖からの転落を土壇場で回避できたことは市場に安心感を与えたが、抜本的な財政再建策や米国債発行枠(債務上限)引き上げなど先送りされた課題も多い。

 大統領と議会の対立は尾を引いており、波乱含みである。

 米国経済は住宅市場が好転し、緩やかに持ち直しつつあるとはいえ、失業率は8%弱に高止まりして雇用情勢は厳しい。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は、失業率が6・5%程度に安定するまで、ゼロ金利政策を継続する異例の金融緩和策を決めた。政府とFRBが一段と連携を強化し、雇用改善と力強い米国経済を実現してもらいたい。

 北米で非在来型天然ガスの開発が進む「シェールガス革命」への期待が高まっている。本格的に普及すれば米製造業が復活し、産業競争力の強化につながろう。

 ◆日中関係安定が重要◆

 12年の実質経済成長率が、雇用維持に重要な目安の8%を割ったとみられる中国では、景気回復の足取りが鈍い。今年の成長も8%程度にとどまりそうだ。

 中国政府は08年秋のリーマン・ショック後、大型景気対策をテコにV字回復を実現し、世界を牽引(けんいん)した。だが、中国が今、同じような対策を打つ気配はみえない。

 中国の懸案は、過度に輸出に依存する経済から、個人消費など内需主導型経済への転換だ。

 尖閣諸島を巡る日本との対立激化で日中関係が冷え込めば、日本企業による中国投資にブレーキがかかり、中国経済にも響く。両国関係を安定させる重要性を中国当局は再認識すべきである。

2013年1月4日01時20分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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