HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 53815 Content-Type: text/html ETag: "344fb-1f42-4d2508e25b484" Expires: Thu, 03 Jan 2013 00:21:53 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Thu, 03 Jan 2013 00:21:53 GMT Connection: close 習政権と日本 戦略的外交で「互損」の脱却を : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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習政権と日本 戦略的外交で「互損」の脱却を(1月3日付・読売社説)

 ◆中国の強硬・膨張路線を牽制せよ◆

 富国強兵路線を突き進む中国が東アジア情勢を不安定化させている。同時に、中国は発展する巨大市場として日本の成長にも欠かせぬ存在だ。

 安倍政権は、戦略的な外交を展開し、中国の力まかせの膨張を牽制(けんせい)するとともに、国際協調に向かうよう中国に粘り強く促していくことが、課題となろう。

 昨年11月、共産党トップの総書記に就任した習近平氏は3月の全国人民代表大会(国会)で、党と軍の最高ポストに加えて国家主席にも就任する。

 ◆課題山積の国内情勢◆

 習政権にとって、最優先事項は一党独裁をいかに維持していくかであり、そのためには持続的な経済発展がカギを握る。

 だが、問題は山積している。

 これまでのような高成長が望めない中、深刻な所得格差をはじめ、官僚腐敗や不公正な司法、環境問題などに対する民衆の不満は爆発寸前の状態にある。各地で頻発する暴動はより大規模化し、破壊行為はますます激化している。

 元副首相を父に持つ習氏は高級幹部の子女グループ「太子党」の代表だ。既得権益層にメスを入れてまで、格差是正など大胆な改革に踏み切るようには見えない。習氏の対外強硬姿勢は不安定な国内情勢の裏返しでもある。

 習氏は政権発足以来、「中華民族の偉大な復興」というスローガンを掲げている。かつて大帝国だったにもかかわらず、海洋権益を軽視したため、清朝末期に列強の侵略を招いたという屈辱の近代史を踏まえたものだ。

 習氏は昨年12月、軍部隊を視察した際、「中華民族の偉大な復興の夢とは、強国の夢であり、強軍の夢だ」と語り、軍の強大化を目指す方針を表明している。

 日本の防衛研究所は最近の報告書で、中国軍と海洋当局の連携が進展していることを指摘し、「周辺国が権益保護のために軍を派遣すれば、中国軍が投入される可能性が高い」と警鐘を鳴らした。

 ◆「海洋強国」建設が加速◆

 国内総生産で日本を抜き、米国に迫ろうとする中国にとって、超大国への必須条件が「海洋強国」の実現である。強大な軍事力を背景に、資源や海上交通路(シーレーン)などの海洋権益を追求する姿勢は今後も強まるだろう。

 経済大国化に伴うナショナリズムの高揚が政権の強硬路線を支える構図は極めて危険だ。東シナ海と南シナ海で中国が一層大胆な示威行動を展開すると見てよい。米国の「アジア重視」戦略には、これを牽制する狙いがある。

 日本は、尖閣諸島周辺の海域・空域の警戒監視活動に万全に取り組めるよう長期的な体制作りをしなければならない。

 安倍首相が日中関係を「21世紀の外交・安全保障政策上最大の課題」と位置づけたうえで、関係各国と連携する戦略的な外交の必要性を主張するのは妥当だ。

 ◆日米連携で抑止力強化◆

 日米同盟をより強固にしつつ、東南アジア各国やインド、豪州などと協調し、中国に自制を促すことが何よりも大切である。

 日中関係は1972年の国交樹立以来、最悪だ。国民感情に与えた影響も甚大で、昨年秋の内閣府の世論調査では、中国に「親しみを感じない」とする回答が過去最高の80%に達した。

 中国は尖閣諸島に対する領有権を公然と主張し、日本の領海・領空への侵犯行為を行っている。

 日本が実効支配する尖閣諸島に対し、中国が力によって一方的に現状を変更しようとするのは国際社会のルールに反する。日本は中国の不当な行為と日本の尖閣諸島領有権の正当性を国際社会に訴えていかねばならない。

 米議会は、日米安保条約5条に基づく米国の対日防衛義務が尖閣諸島に適用されることを確認する国防権限法案を可決した。中国への重要な抑止力となろう。

 米国主導の環太平洋経済連携協定(TPP)に日本が参加することも、中国の影響力の膨張を食い止めることにつながる。

 将来的には、その中国をアジア太平洋圏の経済連携の枠組みに取り込んでいくことが肝要だ。

 中国による日本製品の不買運動は対中投資機運に水を差した。

 中国の生産拠点としての魅力が薄れ、中国以外に活路を模索する動きが広がっている。日本だけでなく、自国経済も損害を受けていることを中国は認識すべきだ。

 日中両国は首脳交流を再開する必要がある。尖閣問題と、その他の政治、経済、文化関係を切り離すことで、戦略的互恵関係を維持していくことが重要である。

2013年1月3日01時14分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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