HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 39762 Content-Type: text/html ETag: "a9a6b1-242a-1cb5a100" Cache-Control: max-age=2 Expires: Tue, 01 Jan 2013 01:21:07 GMT Date: Tue, 01 Jan 2013 01:21:05 GMT Connection: close
大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去50日間分の天声人語のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。
|
大晦日(おおみそか)の深夜から元日の早朝にかけて、時間の流れは魔法のようだ。さっきまでざわついていた年の瀬の空気が、数時間眠って目覚めれば、静かにひきしまっている。年あらたまる和やかな朝は、いくつ歳(とし)を重ねてもありがたい▼思えば暮れから新春への10日間ばかり、私たちは毎年、不思議な時空を通り抜ける。師走の25日まで、街はクリスマス一色に染まる。それが、あくる日からは、ものの見事に迎春モードに一変する▼ゆうべの除夜の鐘で百八煩悩を消し去って、きょうは神社で清々(すがすが)しく柏手(かしわで)を打つ。キリスト教に始まって仏教から神道へ。いつもの流れに身をゆだね、この国の年は暮れ、年は明ける▼日本海側は大雪の正月になった。三が日に降る雪や雨を「御降(おさがり)」と言う。めでたい日の生憎(あいにく)の空模様を、ご先祖は天からの授かりものとして美しく言い換えてきた。言葉に宿る霊力が幸をもたらすと信じた民族ならではだろう▼そんな「言霊(ことだま)の幸(さきわ)う国」は3種の文字を持ち、ゆえに三つの幸福がある。「幸せ」と「しあわせ」と「シアワセ」は同じようで微妙に違う。たとえるなら、「シアワセ」は冷えた五臓に熱燗(あつかん)の一杯がじんわり広がるとき。「しあわせ」は赤ちゃんの寝顔に見入る父さん母さん、といったところ▼「幸せ」は人生航路の順風だろうか、漢字は構えが広い印象になる。一族再会、おみくじの大吉、雑煮の湯気……何でもいい、年の初めの幸を喜び、気分新たに歩み出したい。混迷の世であればこそ、なお。