HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 29 Dec 2012 00:21:07 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:松井秀喜引退 ひたむきさ、貫いた:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

松井秀喜引退 ひたむきさ、貫いた

 多くの人々に愛され、また多くの人々を勇気づけてきた男が球場を去る。松井秀喜、引退表明。栄光も挫折も味わいつつ奮闘した強打者に、今後への期待もこめて惜別の拍手を送りたい。

 日米双方の野球界にかつてない足跡を残した希代のスラッガーが現役引退を表明した。巨人時代は不動の四番として君臨し、米メジャーリーグではヤンキースを中心に、十年にわたって印象的な活躍を続けてきた松井秀喜選手。ここ二年ほどは度重なる故障に悩まされ、思うようなプレーができない状態だったが、それでも並みいるパワーヒッターの中で示した豪打の存在感は、メジャーに渡った日本選手の誰より大きかったといえる。

 メジャーではシーズン百打点を四回。三十本塁打も記録した。とりわけ鮮烈な印象となって残ったのは、二〇〇九年のワールドシリーズでなし遂げたMVP獲得の快挙。長距離打者がそろうメジャーで中軸を打ち続けた実績は、日本野球の可能性を示すものとして長く歴史に残るだろう。

 ただ、松井選手の魅力はバットマンとしての活躍にあるだけではない。ひたむきに努力を重ねて野球に取り組む姿。不運に遭ってもくさることなく、明るくさわやかにプレーする人柄。チームを第一に考える姿勢。いかにもスポーツマンらしいその人間味こそが一番の魅力だったのではないか。

 誰もが一目置く大選手となってからも、試行錯誤を重ねて力を出し尽くそうとしてきた。人気球団のスターであっても、おごらず高ぶらず、誠実にファンと向き合ってきた。いわば人間・松井秀喜そのものが日米のファンを等しくひきつけてきたのだ。だからこそ多くの人々が松井を応援し、その奮闘に励まされてきたのである。

 そんなひたむきさや誠実さ、てらいなく素朴に努力し続ける姿勢はまた、現代社会がしだいに失いつつあるもののようにも思える。われわれは松井選手の姿に、再び取り戻したいもの、なくさずに守っていきたいものの面影を見ていたのかもしれない。

 三十八歳での引退はいささか早い。しかし彼にはこれからも期待がかかる。日米の野球を知り、双方のファンから愛された選手だ。となれば、問題が山積する日米野球界の関係を改善していく、またとない懸け橋ともなれるだろう。そして野球少年たちには、みなに愛された強打者の軌跡からさまざまなことを学んでほしい。

 

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