テッド・ウィリアムズは、戦前から戦後にかけて活躍し、打率4割も刻んだ伝説の大リーガーだ。打撃練習で快音を響かせた後で、彼はつぶやいたそうだ。「おもしろいな、なんておもしろいんだ。一日中やっても飽きやしない。その上で金までもらえるんだからな」▼松井秀喜選手は自著『信念を貫く』で、この逸話を引きつつ書いている。<テッド・ウィリアムズほどは打てない僕ですが、「一日中やっていても飽きやしない」という気持ちは同じです>▼<僕は義務感だけで仕事に取り組んではいません。もっと単純な動機があります>とも記している。もっと投げたい、打ちたいと思っているうちに日が暮れる。何でこんなに早く太陽が沈んでしまうのか、と悔しがるような少年だったという▼好きな野球だから妥協はしたくない。好きな野球だから負けたくない。ただひた向きに「好き」を追求し、世界一の舞台でも輝いた▼引退の記者会見で「皆さまから見たら、引退という形になるのでしょうけど、僕はあまり引退という言葉は使いたくない」とことわってから、続けた。「まぁ、これからまだ草野球の予定も入ってますし、まだまだプレーしたいなと思っています」▼ユーモアの向こうに夢が透けて見えた。職業には引退があっても、「好き」に終わりはない。野球場で「松井監督」に会える日を、待とう。