HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 26 Dec 2012 02:21:52 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:「夢のかけら」を集めて 海江田民主新体制が始動:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

「夢のかけら」を集めて 海江田民主新体制が始動

 民主党新代表に海江田万里元経済産業相(63)が選ばれた。衆院選で惨敗し、党を取り巻く環境は厳しい。政権を再び託せる政治勢力へと復活できるのか。

 代表選後の「頑張ろう三唱」のぎこちなさが、党を覆う沈滞ムードを物語る。馬淵澄夫元国土交通相(52)を破り、二度目の挑戦で代表の座を射止めた海江田氏にとっても気の重い再始動であろう。首相の座は限りなく遠い。

 「身を粉にして民主党再生のために自分自身の生を全うしたい」

 海江田氏が代表選出後の記者会見で語ったのは、党再生に一身をささげる悲壮な決意だった。

◆党の再生は厳しく

 民主党の再生は容易ではない。参院では辛うじて第一党の地位にあるが、衆院選では公示前二百三十議席を五十七議席に減らした。一九九八年の新しい民主党結党時の九十三人をも下回る大惨敗だ。

 きょう首相に指名される安倍晋三総裁率いる自民党は、来年夏の参院選までは衆院選勝利の勢いをそがないよう「安全運転」に徹するだろう。

 野党側が付け入る隙を見いだすのは簡単ではなし、与党が参院で半数に満たない「ねじれ」状況を利用して、野党側が党利党略で政権を追い込み、政治を混乱させることは厳に慎むべきである。

 参院選で民主党が続けて負ければ、政権復帰はさらに遠のくが、民主党の存在理由がなくなるわけではなかろう。

 公明党と合わせて衆院で三分の二を超える自民党中心の巨大な政権は官僚組織と親和的だし、地域主権改革に積極的とは言えない。

 財界の利益を代弁し、建設業者を潤す公共事業の拡大にも前向きだ。ずさんな原子力行政を反省はしても、原発稼働継続の選択肢は捨てない。憲法九条改正や「集団的自衛権の行使」容認も視野に入れる。対立軸はいくらでもある。

◆生活者に寄り添い

 民主党は、九八年の結党時に宣言した「私たちの基本理念」に明記されているように「『生活者』『納税者』『消費者』の立場を代表」する政党ではなかったのか。

 それこそが自民党に代わって政権に就く価値のある政党としての存在理由だった。政権交代を成し遂げた二〇〇九年衆院選のマニフェストもそうした立場・理念を政策に具体化したものと理解する。

 官僚丸投げの政治から政治家主導の政治へ、中央集権から地域主権へ、税金の無駄遣いと天下りの根絶、コンクリートから人へ、国民の生活が第一、緊密で対等な日米同盟関係、などなど。

 自民党は、民主党の掲げる政策が長年進めてきた政治の根本的転換になると警戒したからこそ、執拗(しつよう)に攻撃を続けたのだろう。

 しかし、三年四カ月の民主党政権は、自民党政治とは違う理念・政策を実現するための政治的能力や努力に欠けていた。

 有権者と真摯(しんし)に向き合う謙虚さもなかった故に、マニフェスト違反の消費税増税を強行できたのであろう。政権運営の未熟さを補うだけのひた向きさもなかった。

 民主党は自らの来し方を深く反省し、再び政権を担いうる政党へと脱皮するため、党改革を不断に進める必要がある。

 自民党と同じような政策を進めたり、自民党の補完勢力に堕すようなら、解党した方がましだ。

 幸い、官僚主導からの脱却や中央集権の打破など民主党が掲げた理念・政策は、衆院選惨敗で全否定されたわけではない。それは、民主党に代わって台頭した日本維新の会やみんなの党が同趣旨のことを掲げ、勢力を伸ばしていることからも明らかだ。

 自民党が衆院選で圧勝した理由の一つに、多党化による候補者乱立で非自民票が分散し、自民党候補を利したことが挙げられる。

 民主党には、分散した非自民の政治勢力を結集する役割も率先して果たしてほしい。

 そのためには、異論をも包み込む包容力に富んだ政党に生まれ変わらねばならない。異論の排除は簡単だが、それでは政権交代可能な勢力再結集は不可能だ。

 党内の主導権争いに明け暮れ、政党としてのまとまりを欠いたことも、衆院選惨敗の原因になったことを想起すべきである。

◆政治の歯車を回せ

 今の民主党の母体となった、鳩山由紀夫、菅直人両氏が共同代表を務める旧民主党結成は九六年。政権交代まで十三年を要した。

 民主党の衆院選惨敗で千々に砕け散った、自民党とは違う政治の実現という「夢のかけら」を丹念に拾い集め、再び形にするのは根気のいる作業だ。しかし、かけらをそのまま捨てるのは惜しいと思う国民は多いのではないか。

 民主党はつらくても、その思いに応える政党であってほしい。それがいずれ報われ、日本政治の歯車を再び回すことになる。

 

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