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大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去50日間分の天声人語のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。
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仲間ぼめになるけれど、『よりぬきサザエさん』(朝日新聞出版)のシリーズがなかなか面白い。評判にたがわず郷愁と笑いで楽しませてくれる。しかし昭和は遠くなりにけりで、若い世代には解説が必要と思われるあれこれも多い▼ワカメがりんごの木箱に手を突っ込んで、「まだあったかな?」。これも分かりにくいだろう。昔は、傷まないようにもみ殻の中へりんごを詰めた。大人数の家では、箱ごと買って冷暗所に置き、中をまさぐって一つ一つ取り出したものだ▼2年前の本紙声欄で、青果店に育った女性が回想していた。木箱から売り物のりんごを取り出すのを手伝ったそうだ。もみ殻は近所の卵店にもらわれて卵のクッションになった。木箱は壊して風呂をわかしたという。ものの使い方に無駄のない時代だった▼りんごからの連想だが、女優の故沢村貞子さんが「あたりみかん」という短文を書いていた。箱の隅っこで傷んだのを、子ども時代に東京・下町の八百屋で安く売っていたそうだ▼今なら廃棄だろう。だが「ちょいと見場(みば)は悪いけど、おなかこわすわけじゃない」と、売る方も買う方もお値打ちな「当たりみかん」と呼んだ。サザエさんより昔の話だが、賞味期限を切らしては大量に捨てるばち当たりを、じんわり戒めてくる▼日本では年に500万トンを超す食料が、まだ食べられる状態で捨てられるそうだ。あれやこれやとご馳走(ちそう)の季節。ほんの昨日(きのう)までの丁寧さ、つつましさに、少し思いを致してみたい。