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大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去50日間分の天声人語のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。
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チャールトン・ヘストンといえば、映画「ベン・ハー」などに主演した米国の名優だ。その人がライフル銃を頭上にかかげて「死んでも銃を放さない」と獅子吼(ししく)する姿をご記憶の人もあろう。映画の話ではない。筆者が在米していた頃、彼は全米ライフル協会の会長だった▼10年前、西部のアリゾナ州で大学生が教員ら3人を射殺する事件があった。すると協会は、ショックに滅入(めい)るその町であえて集会を開き、銃の擁護を力説した▼「車が歩行者に突っ込む事故が起きても、自動車愛好家の集会は中止されない」と協会幹部は語ったものだ。筋金入りの右派の圧力団体だが、今度ばかりは、少しは考え直したかと思っていた▼東部のコネティカット州で児童ら26人が射殺された事件に全米が沈む。さすがに協会も「意味のある貢献をする」としおらしかった。だが一昨日、規制よりも「すべての学校に武装警察官を配置すべきだ」と提言した。「銃を持つ悪い奴(やつ)を止められるのは、銃を持った良(い)い奴しかいない」という理屈らしい▼米国では銃を「平等をもたらすもの」とも呼ぶ。相手が何者でも銃を持てば対等になる、という考えに根ざしている。いきおい「撃たれる前に撃つ権利がある」となり、社会不安が募るたびに人々は銃を買って身構える▼その数は膨張を続け、いまや2億丁とも3億丁ともされる銃が市中に出回る。わが子を愛撫(あいぶ)する手で銃をなでる父母もあろう。ぞくりとするような横顔を、あの国は時おりのぞかせる。