英国の名宰相チャーチルは、大変な親ばかだったらしい。長男のランドルフは甘やかされて育ち、大変なうぬぼれやになったが、チャーチルは「息子は、大物になるよ」と太鼓判を押していた▼息子も政治家を目指したが、落選に次ぐ落選。金に困って賞金狙いでテレビのクイズ番組に出て、赤っ恥をかいたこともある。父譲りの文才はあったものの、『チャーチル伝』も書き上げられずに、酒の飲み過ぎで死んだ▼『偉人の残念な息子たち』(森下賢一著)を読むと、偉大な父を持つことの難しさが分かる。エジソンの息子の一人は「人の考えを写しとれる機械」の開発会社をつくったり、詐欺まがいの事業に手を出した。伝説のギャング、アル・カポネの息子は三ドル五十セントの商品を万引して、捕まった▼韓国の大統領選で、朴正熙元大統領の娘、朴槿恵さんが当選した。中国の十年ぶりの指導者交代でトップになった習近平氏も亡父は副首相。これで安倍晋三氏を含め、日中韓の首脳が三人とも世襲政治家になる▼見事、首脳にまでなったのだから、「立派な子どもたち」なのだろうが、よくもまぁ、そろいもそろって世襲政治家ばかり、と思わぬでもない▼そう言えば、もう一人、世襲の親玉のような首脳がいましたな、北朝鮮に。この際、「東アジア世襲政治家首脳会議」でも催して、胸襟を開き合ってはいかがか。