日銀が、自民党の求めに応じる形で金融政策の見直しに入った。デフレ脱却が実現できない以上、当然である。「世界標準」の2%程度のインフレ目標を導入し、達成には責任を負うことが必要だ。
日銀は二十日の金融政策決定会合で、追加金融緩和として資産買い入れ基金を十兆円増額することを決めた。同時に、二月に導入した「消費者物価指数の上昇率で前年比1%をめどとする金融政策」の点検を始めた。
これは事実上、自民党の安倍晋三総裁が求めてきた大胆な金融緩和のための「2%程度のインフレターゲット(目標)」政策を導入するかの検討である。
2%程度のインフレ目標は、緩やかな物価上昇を意味する。インフレというと、物価が上がり続けたり、金利上昇に歯止めがかかりにくいといったイメージがある。しかし、インフレ目標はむしろ物価の安定を目指し、日本を除く先進国などで広く導入されている金融政策である。
中央銀行が物価の目標を定め、達成するまで緩和や引き締めを続けると約束するため、市場はそれを目安にすることで物価が安定する。導入国ではその効果が実証されている。
これに対し、日銀の政策は「1%をめど」とあいまいな表現で、とても約束とはいえない。実際の金融緩和も「小出し」の繰り返しで、「強力な金融緩和」との宣言とは裏腹に市場に供給する資金量は欧米の中銀に比べ圧倒的に少ない。それはひとえに、日銀が「目標」という強い約束をせず、ゆえに結果責任から逃げているためである。十五年もデフレが続くのは世界唯一であり、日銀の特異な金融政策が問われるゆえんである。
だから、デフレから抜け出すには、日銀が政府と政策協定を結び、欧米並みの2%の物価目標を導入する。目標達成の期限は二年程度などと定め、手段については日銀の独立性を尊重して任せる。
結果は、一定期間の平均で目標の範囲内に収まればよいが、それでも達成できない場合は責任を明確化させる必要があろう。
当然、物価の上昇だけで国民生活が向上するわけではない。デフレ脱却と円高是正が実現したとして、肝心の賃金上昇などに波及するまでには年単位の時間を要するだろう。需要を高める持続的な経済成長が欠かせない。
政府も、労働法制など規制改革や的確な財政・税制のかじ取りが問われるのは言うまでもない。
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