米陸軍の秘密情報機関の一員として、日本軍と戦った日系二世たちにインタビューした映画「二つの祖国で 日系陸軍情報部」が、東京で公開されている。すずきじゅんいち監督の「日系史ドキュメンタリー三部作」の完結編だ▼真珠湾攻撃後、「敵性外国人」として強制収容された日系二世の若者たちは、母国に忠誠を誓うために軍隊への入隊を志願した。彼らを代表する人物が、十七日に亡くなったダニエル・イノウエ米上院議員(民主党)だ▼この映画にも登場するイノウエ議員は、日本から移住した両親の間にハワイで生まれた。日系人だけで編成された四四二連隊戦闘団に参加し欧州戦線でドイツ軍と戦った▼戦闘で右腕を失い、米軍人最高の名誉勲章を授与された「英雄」だ。戦後、政界入りし、日系人初の下院議員に。六二年から連続九期、上院議員を務め、上院議長代行の要職にあった▼昨年六月に来日、日本記者クラブで会見した時、祖父から教わった「義務」と「名誉」という二つの言葉が、非常に重要だったと語っていた。明治の日本人の気骨を思わせる政治家だった▼三年前、初来日するオバマ米大統領が広島、長崎への訪問を模索した際、米国内で反対論が強まったが、イノウエ議員は被爆地訪問を支持した。母親は広島出身だったという。日米をつないでいた太いパイプが切れた喪失感は大きい。