衆院選で惨敗した民主党。公約違反の消費税増税を強行し、生活者の側に立つ結党の理念を忘れた当然の帰結だ。初心に帰って足元を見つめ直す。衆院選惨敗を態勢立て直しの機会にせねば。
衆院二百三十議席から五十七議席に。小選挙区制のなせるわざとはいえ、壊滅的敗北であることは否定のしようがない。比例代表では日本維新の会を下回る第三党に後退し、民主党に対する視線の厳しさを物語る。
衆院五十七議席は一九九八年の新しい民主党結党時の九十八人をも下回る。数を減らした民主党に今、必要なことは、結党時の純粋な気持ちに戻ることではないか。
民主党には綱領がないといわれるが、これに該当する「私たちの基本理念」が厳然と存在する。
「『生活者』『納税者』『消費者』の立場を代表します」と。
しかし、三年三カ月続いた民主党の治世で、その実感が薄いのはなぜだろう。決定的な理由にはやはりマニフェストに反する消費税増税を自民、公明両党と組んで強行したことを挙げざるを得ない。
税という議会制度の根幹にかかわる問題で、国民に問い掛け、信を問う民主政治の手続きを無視したやり方に民主党の変質を感じ取った。政権に就いた民主党は程なく官僚に取り込まれて統治する側に立ち、生活者の立場をもはや代表していないのではないか、と。
国民の信頼を取り戻し、再び期待される民主党になるためには、結党の理念を再確認し、それを具体的な政策に磨き上げ、弱点だった政権担当能力を身に付ける必要があるのだろう。
衆院選では、藤村修官房長官ら民主党の閣僚七人、仙谷由人副代表ら党幹部の落選が相次いだ。有為な人材を喪失し、再生への道のりは決して楽ではないが、地道に党勢を立て直すしかあるまい。
民主党には、もう一つ注文がある。異論をも包み込み、説得を尽くす、包容力のある忍耐強い政党に再生してほしいということだ。
旧新進党解党でばらばらになった小政党が集まって新しい民主党となり、小沢一郎氏率いる旧自由党とも合流して政権交代を成し遂げた。小川のせせらぎがやがて大河となるに似ている。
異論の排除は簡単だが、それでは政権交代可能な大勢力を結集することはできない。民主党分裂などによる多党化が小選挙区での非自民票を分散させ、自民党を利した。今回衆院選の教訓でもある。
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