東日本大震災から二度目の冬を迎えました。被災地の復旧復興のスピードがあまりに遅すぎます。生活再建を加速させるため、政治の力こそ求められます。
大津波や福島第一原発の放射能の被害によって、避難を強いられている人は、いまだに約三十二万一千人もいます。震災の発生三日目の避難者数が約四十七万人だったことを考えてみても、いかに大勢の人が不自由な生活下にいることか分かるでしょう。避難先は全国四十七都道府県の約千二百市区町村に散らばっています。
とくに仮設住宅に住む人は、約十一万四千人に上ります。まず、住宅対策が急がれます。「仮設」ではなく、恒久的な住宅を確保せねばならないのは当然です。大きな眼目は、災害公営住宅の建設と防災集団移転でしょう。
復興庁によれば、公営住宅の整備に着手した割合は20%にすぎません。用地の造成や埋蔵文化財調査などに時間がかかっているようです。震災から一年九カ月を経ても、この進ちょく状況では、ため息も深まるばかりです。
防災集団移転とは、いわゆる高台移転のことです。市町村が出した計画に国土交通相が同意した割合は58%ですが、完成した事業は一つもありません。一九九三年に大地震に遭った北海道・奥尻島では、高台移転したものの、人口が30%も減ってしまいました。しっかりした町づくりを構想しないと、住民流出が起こります。
雇用対策も急がれます。被災三県の有効求人倍率は全国平均より高いのですが、ミスマッチの問題が起きています。津波で海水をかぶった農地の復旧も遅れています。営農が再開できたのは38%にとどまります。漁港の機能が回復した割合も34%にすぎません。東北地方の重要産業ですから、もっとスピード感が必要です。
復興の歩みがのろいうえ、復興予算が被災地の再建とはまるで無関係な事業に流用されていました。「日本の再生」という、あいまいな用語を法律に入れたため、官僚らの勝手放題が起きたのです。許し難い悪行といえます。
一月からは二十五年間にわたる復興増税が始まります。国民が被災地を応援するために背負う税金です。政治家も官僚もその重みをかみしめるべきです。公示日には、四党首が福島で第一声を上げました。被災地を希望で満たす政策と実行が何より問われます。
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