かつお節を削っていて、ぎっくり腰になったことがあるぐらい、だしを取る作業が好きだ。昆布とかつお節で丁寧に引いた琥珀(こはく)色のだし汁にみそを溶かした椀(わん)を吸うのは至福の時だ▼「みそは遠いものを合わせるとよい」と言われている。産地や原料で風味が大きく異なるみそを合わせれば、よりうまさを引き出せるからだ▼離合集散が常である政党はどうだろう。東京と大阪で自治体のトップを務めた石原慎太郎、橋下徹両氏の党が慌ただしく合流した日本維新の会は、かつての勢いを失っているように見える▼原発などの重要政策の隔たりを「小異」と断じる石原さんが代表になり、イメージが変容した、と有権者は受け止めているのではないか。その石原さんは街頭演説で、衆院選で自民党が政権復帰すれば、憲法改正に協力する考えを明らかにした▼憲法九条が同胞を見殺しにした、と拉致問題にも言及した。「返してくれなかったら『戦争するぞ』『攻めていくぞ』という姿勢で同胞を取り戻せた」と訴えた。耳を疑うような好戦的な主張だ▼日朝協議の進展に期待する拉致被害者の家族や国際社会が自制を求める中、北朝鮮は長距離弾道ミサイル発射という愚挙を強行した。米国まで射程に入り、北朝鮮の脅威は増すばかりだが、怒りの仮面の裏側で選挙に有利な材料だ、とほくそえむ人たちの顔も浮かんでくる。