HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 52032 Content-Type: text/html ETag: "3955c-1856-4d0aaa36e5a38" Expires: Wed, 12 Dec 2012 21:22:32 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Wed, 12 Dec 2012 21:22:32 GMT Connection: close 舞鶴殺害無罪 検察に厳格な立証求めた判決 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)




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舞鶴殺害無罪 検察に厳格な立証求めた判決(12月13日付・読売社説)

 被告を犯人と断定できる証拠が存在しないと判断した以上、無罪の選択しかなかったということだろう。

 京都府舞鶴市で2008年5月、高校1年の女子生徒を殺害したとして、殺人と強制わいせつ致死の罪に問われた64歳の男性被告に対し、大阪高裁は逆転無罪を言い渡した。

 判決は「被告が犯人であるとするには合理的な疑いを差し挟む余地がある」と結論付け、1審の無期懲役を破棄した。

 「疑わしきは被告の利益に」という刑事裁判の原則に沿った判断を示したと言えよう。

 被告は一貫して犯行を否認した。凶器や指紋などの直接証拠も見つからなかった。

 このため、検察は、被告と被害者によく似た男女が一緒にいたとする目撃証言を柱に、状況証拠を積み重ねて立件した。

 しかし、判決は、目撃証言について、見過ごせない変遷があるとして信用性を否定した。

 最高裁は一昨年4月、大阪の母子殺害事件の判決の中で、状況証拠だけで有罪認定するには「犯人でなければ説明のつかない証拠が必要」との判断基準を示した。

 今回、検察が提示した状況証拠は、この基準を満たせなかったのだろう。捜査当局は、広範な証拠収集と厳格な立証を求めた判決を重く受け止めねばならない。

 この事件で、京都府警は被告を別件の窃盗容疑で逮捕した後、証拠がないまま、殺人などの容疑で自宅を6日間も捜索した。衣類や毛髪など約2000点を押収し、鑑定を実施したものの、有力な物証は得られなかった。

 被告は被害者の遺留品の特徴について供述したともされたが、判決は「捜査機関による示唆や誘導が行われた可能性が否定できない」と指摘した。

 犯人だと決めつけ、冤罪(えんざい)を招いてきた強引な捜査が、この事件でも行われたのではないか、との疑問を抱かざるを得ない。

 判決が認めた数少ない証拠の一つが、被告と被害者らしい姿が映った防犯カメラの映像だった。

 防犯カメラは近年、犯人を特定する有力な武器となっている。先月、東京都板橋区で発生した主婦刺殺事件でも、駅や商店などに設置された防犯カメラが、変装した容疑者の姿を捉えていた。

 ただ、どんなに防犯カメラの性能が向上しても、その映像だけでは有罪の証明にならない。他の証拠で補強する必要があることを捜査機関は再認識すべきだ。

2012年12月13日01時53分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。

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