北朝鮮が事実上の長距離弾道ミサイルを発射した。前日に修理中だとの情報があり一時延期説まで流れたが、軍事力を伴う行動はもともと不意を突くものだ。日本の備えは十分だったのか。
北朝鮮が「人工衛星」と主張するミサイルは沖縄県上空を通過したが、破片落下などによる国内の被害は出ていない。
北朝鮮は二日前、「技術的な欠陥があった」として発射予告期間を今月二十九日まで延長すると発表した。韓国政府関係者からは、ミサイルの一部を発射台から外して解体しているとの情報もでた。
森本敏防衛相は発射後の会見で衛星画像により、北朝鮮側が一日で組み立て直したか、代替機材を使って発射台に取り付けた可能性を示唆した。修理中かもしれないとの情報は日米韓三国で共有されていたが、延期説に惑わされず警戒態勢を続けた。
今年四月、北朝鮮のミサイル発射時の政府の対応はひどかった。確認に手間取り日韓の間でも情報が十分に伝達されず、政府発表は米韓メディアが報道した後だった。全国瞬時警報システム(Jアラート)も全く使われなかった。
今回はミサイルの沖縄県上空通過の六分前に、Jアラートなどにより発射の第一報が全国自治体に伝達された。前回の失敗の教訓が生かされたといえよう。
ただ警戒態勢には検討の余地がある。自衛隊は今回も地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を配備したが、射程が短いミサイルの迎撃はできても、射程数千キロ、高速の長距離弾道ミサイルを撃ち落とせるかは未知数であり、配備自体を疑問視する指摘もある。
ミサイルの三段目が地球を回る軌道に乗ったか最終確認はされていないが、一段目が韓国西、二段目がフィリピン東とほぼ予告通りの海域に落下して、発射と制御能力は向上したといえる。
金正恩第一書記は権威を高め外交でも強硬姿勢で臨むだろうが、国民が飢えているのに「発射費用でトウモロコシ二百五十万トンが買える」(韓国国防省)という愚行をいつまで続けるつもりなのか。
北朝鮮が平和利用だと主張しても、打ち上げ自体が国連安全保障理事会決議に違反する。四月の発射は失敗したこともあり、中国の主張が通って安保理議長の非難声明でまとまったが、国際社会の制止を無視して強行した以上、金融制裁を含めた強い対応が必要だ。
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