「ゲートウエー(玄関)」だって。ドーハで閉幕したCOP18の合意の名前。地球を救う新しいルールづくりは、文字通り、玄関を開けただけ。地球温暖化への危機感の世界共有が、あやうい。
昨年の南アフリカ・ダーバン会議(COP17)同様、会議時間を大幅に延長して、決裂だけは避けられた。年末で約束の期限が切れる京都議定書を二〇二〇年までの八年間、第二約束期間として延長し、一五年までに新たなルールを決めるという手順だけは合意した。空白期間はできずに済んだ。
しかし、温暖化は先進国の責任だと言い張って、削減義務は負わずに、先進国から対策資金を引き出そうとする途上国。途上国にも応分の削減義務を求める先進国。南北間の溝は埋まらず、あと三年で新ルールを採択できるかどうかは、予断を許さない。
京都議定書は、先進国だけに削減義務を課している。産業革命以来の歴史の中で、先進国が多くの化石燃料を消費し、大量の温室効果ガスを排出しながら成長してきたからだ。今や世界の排出量の四分の一を占める一位中国、そして三位のインドは途上国扱いで、今は削減義務がない。
自国経済への影響があるからと、〇一年に早々と議定書から離脱した世界第二位の排出国米国や、四位のロシアも参加しない。
日本は昨年来、第二約束期間に参加しないと決めていた。第二約束期間で削減義務を負うのは主に欧州で、合計排出量は全体の15%程度になってしまう。米中印に削減義務がない以上、議定書を続けても効果がないという、日本の言い分はむしろ本当だ。
だが、このままでいいはずもない。気候変動が原因とみられる災害は世界中で猛威を振るい、被害も膨らむ一方だ。すべての国が削減に参加する新しいルールを作るのは、COP17で決まったことだ。もう先送りは許されない。
ドーハ会議で象徴的な場面があった。会期中フィリピンを巨大な台風が襲い、六百人以上もの命を奪った。今年は特に、異常気象が続いているという。
政府代表は会議場で涙ながらに訴えた。「これ以上遅らせないでください。言い訳をしないでください」と。異常気象は南北を等しく襲う。この危機感こそ共有されるべきではないか。
日本政府には速やかに第二約束期間に復帰して、南北の橋渡し役になってもらいたい。
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