安心して暮らすために社会保障制度があります。少子高齢化が進む今、負担増も避けて通れません。支え合える制度にどうつくり直すか問われています。
スウェーデンの年金制度は明快です。毎年来る通知には、納めた保険料額と退職後に受け取れる受給権が明示されています。働いて保険料を納め続ければ、受給権も積み上がります。保険料率も固定されています。負担と給付の関係が分かりやすい。
低所得者は税を財源とした年金を受け取れます。老後の最低限の生活費は確保されています。十七年かけ制度を準備してきました。
一方で、消費税の最高税率は25%です。国民所得に対する税と社会保険料の負担率(国民負担率)は六割を超えます。医療や介護も含め暮らしの安心を得るために国民は高負担を受け入れています。
日本では二〇五五年に超高齢社会のピークを迎えます。将来の安心を得るためにどんな負担を国民が受け入れて社会保障を支えるのか、課題に直面しています。
支える相手は高齢者だけではありません。非正規で働く若者の就労支援や、育児家庭の仕事との両立、教育支援も要ります。少子化を克服するためにも不可欠です。
社会保障の費用は年百兆円を超えました。約七割が高齢者向けなのを現役世代にも振り向ける。
貧困化も深刻です。かつては親子や夫婦など家族で支え合っていました。生活の自助・自立は基本ですが、今は低所得の現役世代や都市部での独居高齢者が増えました。地域の力も弱まった。安心社会へは公助を手厚くする方向に向かうべきでしょう。
だれでも望むのは不安のない自立した生活です。それを公助で支える。そうすれば結果的に自立力や地域の共助も強化できます。
支え合いは税制も同じです。収入や資産のある人は高齢者でも多めに負担をしてもらう。子どもへの経済支援の代わりに収入のある親はその分税で払う。高収入の芸人の母親が生活保護を受けて批判されましたが、税で払い受給者に回せば支え合いになる。
所得税や相続税のあり方も含め本来、そのための社会保障と税の「一体」改革であるはずです。
日本の国民負担率は四割に届かず先進国では低い。どこまで負担するか国民的な議論は欠かせませんが、負担も給付も分かち合える社会の将来像を各党は探り、真剣に語るべきです。
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