HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 07 Dec 2012 02:21:10 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:アスベスト裁判 立法救済を一日も早く:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

アスベスト裁判 立法救済を一日も早く

 石綿被害に苦しむ元建設作業員が国や建材会社に賠償を求めた訴訟で、東京地裁は対策を怠った国の責任を認めた。原告の半数の請求を退けたなど問題は残るが、立法救済を促した点で評価したい。

 提訴から四年半、患者原告三百八人のうち、五十九人が他界した。提訴前から含めると百九十九人が亡くなり、建設労働者に広がった石綿被害の凄(すさ)まじさを物語る。

 五日の判決は初めて国の「不作為」を認めた。一九七二年には石綿が中皮腫などを引き起こす発がん性物質であることは医学的に分かっていた。労働者を守る責任は一義的には事業者が負うべきだが、労働者は石綿の危険性など知らずに働いてきた。

 国が徹底して現場に危険性を知らせ、石綿建材の使用や生産をもっと早く中止していれば、被害に苦しむ人は減らせたはずだ。それを認めた点にこの裁判の意義がある。遅くとも八一年時点で防じんマスクの着用や、警告表示を罰則付きで義務づけるべきだった。

 この訴訟を含め、全国で石綿裁判が係争中だ。今回は、国の不作為責任を全面的に否定した五月の横浜地裁判決に比べ、裁判官が元作業員の実態に向き合おうとした跡が読み取れるが、不十分だ。原告の線引きは問題ではないか。

 「一人親方」などは事業主で労働安全衛生法の保護対象でないとされ、賠償対象から外された。八一年以前に働いていた人も外された。救済から漏れた原告は半数に及ぶ。建設現場では一人親方も作業員と同様に働く下請けの実態をみれば線引きは公正でない。同法に当てはまらないなら、他の救済法を示すべきではないか。

 原告たちは労災認定や二〇〇六年の石綿救済法で国から給付を受けているが、慰謝料ではない。この裁判であえて提起したのは、国の責任追及と、石綿建材を生産し続けたメーカー四十二社の連帯責任だ。メーカーは八〇年代以降、規制を強めた欧米に向けては石綿を使わない改良品を輸出し、国内では放置した。判決で責任は退けられたが免責とはいえないはずだ。被害者が裁判に訴えなくても救済が図れるよう、判決は国やメーカーに対し、被告になっていないゼネコンも含めて賠償基金を創設すべきと促した。

 石綿被害による労災認定は年間千件、半数は建設関係者だ。患者は今後十年でさらに増え、被災地でも被害が起きている。一日も早く立法救済にかかるべきだ。

 

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