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大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去50日間分の天声人語のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。
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勝ち負けにも、程度に応じて大中小がある。ワーテルローの戦いでナポレオンを退けた英軍の指揮官によれば、大敗の次に恐るべきは「中敗」ではなく、大勝だという。兵士らは望外の戦果に狂喜、陶酔、慢心し、戦いの目的までを忘れかねない▼あの夏、天下分け目の戦(いくさ)で政権交代を果たした民主党も、308議席の大勝に足をすくわれた。衆院での絶対優位で、選挙互助会の結束は緩み、寄り合い所帯は内紛に明け暮れることになる▼きのう公示された衆院選の勝ちっぷり負けっぷりも、次の政権の緊張感を左右するだろう。「ほどほど」に勝ったところが、知恵を絞り、妥協に備え、国を立て直す政策論争に臨む。そんな国会にならないものか▼何人かの党首が福島から第一声を上げた。原発ひとつとっても各党の公約は各様で、政治の過渡期らしい百家争鳴である。投票日までの論戦を通し、私たちは「正しそう」な人と党を選ぶだけだ▼群衆が勝たせるのは、「正しいことを言っている感じ感をもっとも演出できた人」らしい。作家の町田康(こう)さんが、そんな長文を本紙に寄せている。しかし「感じ感」では危うい。音楽のような喋(しゃべ)り言葉から、せめて「正しい感じ」を聞き取らなあかんと▼この国に、過渡期の人模様を楽しむゆとりはない。内外でわき上がる難題に、立ち向かう時間は乏しい。同好会のように新党が生まれ、幸い、選択肢だけは豊かな「感じ」である。争鳴から聞こえ来る処方のウソ、ホントを見きわめたい。