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大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去50日間分の天声人語のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。
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憂うべきか、当たり前と思うべきか、ある本によれば、外交では最後に軍事力がモノを言うというのが国際政治のイロハらしい。次に経済力だそうだ。だが、そればかりではなく国際世論というのがある。どんな国もこれを敵に回したくはない▼その国際世論が、武力も経済力もないパレスチナを後押しした。国連総会が先日、パレスチナの参加資格を、オブザーバーながら「国家」に格上げした。賛成138、反対9、棄権41は圧倒的な支持といえる。対立するイスラエルと、後ろ盾の米国には厳しい結果だ▼ふと浮かんだのが、戦前の日本をめぐるリットン報告書の国際連盟採択だった。満州国の不承認に日本だけが反対した決議は42対1。たとえるなら、それぐらい明らかな「世界の声」に思われる▼同じ国連でも、安保理は米英仏中ロが牛耳って、決議は大国の拒否権に左右される。だが総会はどの国も等しく一票を持つ。血で血を洗う情勢に多くの国が心を痛めている。ちなみに日本は賛成を投じて、米国とは一線を画した▼決議への報復に、イスラエルは占領地に3千戸の入植住宅の建設を決めたという。これは国際法に反するが、強面(こわもて)の国は頑(かたく)なさを崩そうとしない▼パレスチナの名高い詩人が「愛の詩でさえ、ここでは抵抗の詩になってしまう」と言って嘆いた悲劇の地に、和平が灯(とも)る見通しはまだない。その剣を鋤(すき)にうち変え、その槍(やり)を鎌に変える――旧約聖書の言葉に立ち戻っての和解と共存は、かなわないものか。