日本維新の会が衆院選公約を発表した。「卒原発」を掲げる日本未来の党も近く発表する。原発ゼロを目指すにしても、それを実現する具体的な政策が必要だ。選挙戦を通じて議論を深めてほしい。
「原発ゼロの気持ちは捨てていない」と言う橋下徹大阪市長(代表代行)が創設した日本維新の会である。合流した石原慎太郎代表がこれを個人的発言と受け止めようが、公約ににじみ出る橋下色を読み取りたい。
公約に当たる「骨太2013−2016」はエネルギー供給体制の基本方針について「脱原発依存体制の構築」「原発政策のメカニズム、ルールを変える」と表明。
付随する政策実例で原発の安全規制、使用済み燃料の総量規制、廃炉、東京電力の破綻処理、発送電分離、再生エネルギー(促進)などを挙げ、「既設原発は二〇三〇年代までにフェードアウトする(次第に消える)」と記した。
橋下氏の説明によれば、三〇年代の原発ゼロは公約ではない。大きな方向性を示すのが政治家の役割で、目標年限を含む具体的な工程表づくりは行政機構・官僚の仕事と考えるからだそうだ。
そうした役割分担は妥当な面もある。政治家が工程表にこだわりすぎて大局を見失い、実現可能性を軽視したのが、民主党政権の失敗でもあるからだ。
ただ、行政機構・官僚が工程表を作成するという機会を利用し、政策を自分たちの都合のいいように誘導してきたのも、また現実である。甘く見てはいけない。
原発のような国民生活を左右する重要政策は、政治家が大きな方向性とともに目標年限を明確に示すことが必要ではないか。それが国民の支持を得れば、行政機構を動かす大きな力ともなろう。
脱原発をどう実現するかはより重要だ。政策実例に挙げられた使用済み燃料の総量規制や東電の破綻処理、発送電分離などは実現すれば、脱原発への原動力になる。その採否を官僚に任せ、骨抜きにされてはたまらない。
日本未来の党が発表すれば、各党の公約は出そろう。経済政策や雇用対策、消費税増税、社会保障、憲法問題に加え、原発・エネルギー政策は福島第一原発事故後、日本国民の生命と財産を大きく左右する重要政策となった。
各党、各候補は原発稼働を「いつまでに」「どうやって」停止するのかの議論を深めてほしい。それを聞き、公約をじっくり見比べて、貴重な一票を投じたい。
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