四日の衆院選公示を前に党首討論会が開かれた。貴重な一票を投じる国民には、各党の公約、理念・政策がどう違うのか、見極める機会の一つだ。各党首は国民の疑問に答えたのだろうか。
日本記者クラブ主催の討論会には、衆院選で候補者を擁立する十二政党のうち十一党の党首が参加した。二〇一〇年参院選時の九党から増え、発言機会が十分得られなかったと不満を抱く党首がいるかもしれない。
国民には各党首の主張に耳を傾け、他党との違いを理解するいい機会だ。首相就任の可能性のある各党首の力量も比較できる。
疑問もいくつか残った。その一つが日本維新の会の原発政策だ。
前日に発表された公約は「脱原発依存体制の構築」を掲げ、付随する政策実例に「既設原発は三〇年代までにフェードアウトする(次第に消える)」と明記した。
「原発ゼロの気持ちは捨てていない」と言う橋下徹代表代行の意向が反映されたのだろう。
しかし、脱原発を「理念と称するセンチメント(感傷)」と批判する石原慎太郎代表は討論会で「フェードアウトってどういうことですか? 原発をですか? それ違います」と公約修正に言及した。
今後のエネルギー政策を考える際、原発稼働を前提とするのか、稼働停止を目指すのかでは、政策の設計図はがらりと変わる。
その根本が決まっていないのなら有権者は選択のしようがない。工程表づくりは行政機構・官僚の仕事と丸投げせず、原発の扱いをどうするのか明確にすべきではないのか。それが政治の責任だ。
党首は首相候補でもあるが、石原氏は平沼赳夫国会議員団代表を首相候補に推した。ならば党代表は平沼氏に交代すべきだ。その方が有権者には分かりやすい。
選挙後の政権の枠組みも見えてこないままだ。衆院選で仮に自民党が第一党になり、友党の公明党と連立を組んでも、参院では半数に達せず、ねじれ国会が続く。
どの政党と連携するのか、選挙結果が出る前から明らかにすることは難しいのだろうが、原則や条件くらいは有権者に示すべきだ。政権選択の選挙でありながら、その枠組みを白紙委任しろというのでは理にかなわない。
連立や連携には理念や政策の方向性をおおむね一致させることが必要だ。数合わせや党利党略で政権の枠組みや協力関係が決まり、公約が破られ政策がねじ曲げられるのは、もうごめんである。
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