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大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去50日間分の天声人語のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。
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めくり忘れて痛い思いをしたわけではないが、日めくりの暦(こよみ)がどうも苦手である。馬齢のせいか、目に見えて「残り日」が減るのが面白くない。愛用者も多いけれど、24時間すごせる回数券を日々ちぎるような、デジタル的な喪失感がきつい▼他方、ひと月ごとのカレンダーは、きょうとあすの間の余白に味がある。アナログの安らぎとでもいおうか、消えていく時が見えにくいのがいい。ただし月の変わり目には、喪失感がまとめてやってくる▼壁のカレンダーがあと一枚になった。「師も走る」とされる月だから、我々がせわしいのは無理もない。賀状の準備に大掃除、忘年会。今年は選挙も重なり、ざわついた年の瀬になろう▼罪なのは年末ジャンボだ。1等4億円が68本、前後賞を合わせ6億円と史上最高の賞金である。その額に目がくらみ、買ってもいないのに胸が躍る自分がおかしい。かくして、自治体の台所はささやかに潤う▼鹿児島県に住む40代の女性が今年、「宝くじに当選させる」という電話を真に受け、何者かに計4千万円を振り込んだそうだ。だます方が悪いに決まっているが、うますぎる話を聞いた時は途中で耳を塞ぎたい▼見果てぬ夢を、くじではなく、真新しい手帳や日記に託す人もおられよう。365日分の回数券がそこにある。白いページの、なんとまぶしいことか――師走につられて先走りすぎたようだ。まずは残る31枚を惜しんで使いたい。「忙忙(ぼうぼう)」と吹きすさぶ北風に、心まで飛ばされぬよう。