映画館で近く上映される作品の予告編を長々と見せられるのは苦痛だ。騒々しい映像が続くと、本編が始まる前に疲れてしまう。ただ、中にはこれは見逃せないと思わせる作品もある▼山梨県の青木ケ原樹海を舞台に、男女の愛を描いた「青木ケ原」もそうだった。ミステリアスな展開を示唆する予告編の映像に引き込まれそうになったが、一瞬だけ映った人物が気になった▼東京都知事の座を投げ出し、日本維新の会の代表に納まった石原慎太郎さんではないか。原作は石原さんの小説。製作の総指揮を執り、脚本も書いた。都知事役として出演もしている▼知事室の執務も、最後には週一日か二日、それもわずかな時間しか登庁しなかった人だ。その分、映画製作に時間を割いていたのだから、さぞかし見応えのある映画に仕上がっているだろう。公開が待ち遠しい▼その石原さんの辞任に伴う都知事選はきょう、告示される。衆院選より一足先に本格的な舌戦がスタートする。きのうは猪瀬直樹副知事、宇都宮健児前日弁連会長、笹川尭元衆院議員、松沢成文前神奈川県知事の四氏が、日本記者クラブ主催の共同記者会見で主張をぶつけた▼衆院選をめぐる合従連衡の報道に埋もれがちだが、「首都の顔」を選ぶ極めて大事な選挙だ。電力の最大消費地に暮らす有権者の責任として各候補のエネルギー政策を吟味したい。