世界中の高速鉄道や東京スカイツリー、瀬戸大橋などの橋梁(きょうりょう)や原発…。緩むことが許されない場所で多く採用されているネジがある。開発したのは、大阪の中小企業「ハードロック工業」だ▼若林克彦社長は、神社の鳥居の接ぎ目に打ち込まれたくさびを見て、絶対にゆるまないネジの原理をひらめいたという。試行錯誤の末に完成した製品は「オンリーワン商品」として四十年近くたっても売り上げを伸ばしている▼「泥縄」という言葉について若林社長が自著で語っていることが興味深い。「泥棒を捕らえてから縄をなう」ということわざは、準備不足という意味で使われがちだが、効率的ともいえるのではないか、という視点だ▼「そもそも、万事準備をしてからことに臨むというのでは、いつまで経(た)ってもスタートすることはできません。ビジネスにおいて『万全な準備』など、行いようがないからです」(『絶対にゆるまないネジ』)▼政界の新党乱立に、新たな動きが見えてきた。「卒原発」を訴える滋賀県の嘉田由紀子知事が新党を立ち上げ、脱原発を掲げる「国民の生活が第一」や「減税日本・反TPP・脱原発を実現する党」「みどりの風」が合流を模索している▼泥縄的な合流ではある。ビジネスとは次元は違うが、原発をめぐる争点を明確化し、有権者が判断しやすい対立軸をつくる動きは歓迎したい。