「先生、真面目と本気は違うんだよ」。いじめ自殺をテーマに以前、このコラムで荒れていた小学生が女性教師に言った言葉を紹介したことがある▼小欄を教材に使ってくださったという学校関係者から質問があった。「そう言われて、先生は子どもとの接し方が変わったのでしょうか?」。かつて取材した教師に久々に連絡を取り、あらためて話をうかがった▼この言葉は殴られたような衝撃だったそうだ。真面目な教師には型にはめたがる人もいる。「本気とは子どもと向き合い、ありのままの姿を見ること。そこから指導を始めようと心掛けるようになりました」▼文部科学省の緊急調査で、全国の小中高校などのいじめ認知件数は、四月からの半年間で十四万件を超えた。都道府県でばらつきが激しく、統計的な意味はないが、今そこにあるいじめを掘り起こした意義はあるだろう▼いじめ自殺は一九八〇年代から大きく報道されては、忘れられてしまうという繰り返しだ。いじめを研究する内藤朝雄・明治大准教授は、いじめの蔓延(まんえん)を防ぐための手段は、聖域と化した教育現場に市民社会のルールを導入することだ(『いじめ加害者を厳罰にせよ』)と断じる▼本気で子どもたちに向き合う現場の教師を支援したい。だが、限界はある。密室化しがちな学校を、常に地域社会に開かせる仕組みをつくることが急務だ。