HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 24 Nov 2012 20:21:11 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:就学援助 子どもの格差をなくせ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

就学援助 子どもの格差をなくせ

 長引く景気の低迷で、子どもの義務教育費さえ賄えない家庭が増大している。なのに財政難だからと貧困家庭の子への就学援助を怠る自治体が相次ぐ。教育の機会を粗末にしては国の将来は危うい。

 南アルプスの麓に広がる山梨県早川町。人口千二百人ほどの小さな町はこの春から全小学二校と中学一校の教育費を無償にした。

 給食費や教材費、社会科見学や修学旅行の費用を町が肩代わりする。文房具や体操着などの学用品は自前だが、子ども一人当たり年八万円ほど助かる。

 教育費の安さにひかれ、神奈川県や長野県などから引っ越してきた子育て世帯がいるという。過疎化や少子化に頭を痛める早川町にとって望外の成果に違いない。

 それは裏を返せば、同じ義務教育を受けるのに、住んでいる自治体によって家計の負担が大きく異なるという地域格差を物語る。

 文部科学省の調査では、子ども一人にかかる大体の年間費用は公立の小学校で十万円、中学校で十七万円という。これは塾や家庭教師、稽古事といった学校外での学習費を除いての話だ。

 最低限必要なそんなお金を工面できず、市町村の就学援助に頼る小中学生は百五十六万八千人に上る。全体の16%を占め、過去最多だ。一割は生活保護世帯の子、九割はそれに近い困窮世帯の子だ。

 生活保護世帯には国からお金が出るが、ほかの低所得世帯をどこまで援助するかは自治体のさじ加減次第だ。厳しい懐事情から援助枠を切り詰める動きが相次ぐ。給食費が払えないとか、修学旅行を諦めるというような子もいる。

 憲法で義務教育は無償と定めたのに、教育基本法でその範囲を授業料に限ったのが格差のもとだ。戦災復興で財源不足とされたからだが、高度成長期に入っても無償になったのは教科書だけだった。

 高校はもっと深刻だ。国が授業料を負担しても、公立でさえ年二十四万円の費用が要るという。自立支援として生活保護世帯には国からお金が出るが、ほかの低所得世帯の援助の仕組みは貧弱だ。

 日本高等学校教職員組合によれば、奨学金制度がある市町村は六割にすぎず、しかも大方は貸与制だ。長らく借金返済に追われる羽目になる。

 人生のスタート地点となる教育の機会が親の収入に左右されては、貧困層が固定化しかねない。優れた才能が埋もれれば、社会の損失になる。子どもへの投資の底上げを真剣に考えるべき時期だ。

 

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