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日本と中国、韓国が自由貿易協定(FTA)の交渉に入ることを決めた。3カ国の首脳が「年内の交渉開始」に向けて努力すると合意したのが今年5月。尖閣諸島や竹島の問題で一時は正[記事全文]
またもや、イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの激しい空爆が始まった。6日間でパレスチナ人の死者は100人を超えた。多くは民間人であり、いたいけな子たちも含まれる。[記事全文]
日本と中国、韓国が自由貿易協定(FTA)の交渉に入ることを決めた。
3カ国の首脳が「年内の交渉開始」に向けて努力すると合意したのが今年5月。尖閣諸島や竹島の問題で一時は正式決定が危ぶまれたが、カンボジアでの国際会議の場を利用して、3カ国の経済・貿易担当相が一堂に会した。
中国からは、事前に「中日間の産業はとりわけ密接につながっている」(陳徳銘商務相)との声が出ていた。韓国も「FTA交渉自体を拒む必要はない」との判断に至ったという。
領土に関する主張は譲らないが、経済への影響は避ける。そんな「政経分離」の姿勢であれば、歓迎する。
世界の国内総生産(GDP)合計の2割、東アジアでは7割を占める3カ国は、貿易や投資を通じて深く結びついている。
とりわけ、世界第2位と第3位の経済大国である中国と日本は、切っても切れない関係にある。
中国の日本からの輸入は、景気減速に暴動の影響も加わって急速に落ち込んだ。日系自動車会社が使う部品なども減っており、生産の停滞が中国の景気の足を引っ張るのは確実だ。日本からの投資も冷え込んでおり、中国の中長期的な成長に影を落としつつある。
2年前の尖閣沖での漁船衝突事件で、中国はレアアース(希土類)の対日輸出を制限した。その後、日本側が中国以外での資源確保やレアアースを使わない技術開発に努め、中国の関連企業は経営難に陥った。
こうしたことが「政経分離」への教訓になったのだろう。
もっとも、尖閣、竹島問題での対立は根深く、一朝一夕には解決しない。
今回の国際会議でも、3カ国の首脳会談が見送られる一方、中韓両国のトップ会談では日本の過去の「軍国主義」や最近の「右傾化」が話題となり、対日批判で一致したという。
政治と経済の問題は本来、分かちがたい。環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐる駆け引きは好例だ。米国主導のTPPに日本が関心を示した後、中国は日中韓FTAに前向きになった。アジア重視を掲げる米国への対抗意識は明らかだ。
だからといって、政治的な対立を経済に持ち込んでも問題は解決しないし、お互いに困るだけだ。
経済関係の深まりを「重し」として、突発的な衝突を避けつつ、冷静に議論を重ねていかねばならない。
またもや、イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの激しい空爆が始まった。
6日間でパレスチナ人の死者は100人を超えた。多くは民間人であり、いたいけな子たちも含まれる。イスラエル側でも3人が死亡した。
ガザを実効支配するイスラム組織ハマスはロケット弾で報復し、初めてテルアビブやエルサレムに着弾させた。イスラエル軍は、地上部隊による侵攻も準備していると脅しをかける。過剰な軍事力の行使である。
直ちに停戦すべきだ。ここには4年前、1400人以上のパレスチナ人が死んだイスラエル軍によるガザ侵攻の悲劇と愚行の前例がある。地上戦になれば危機は中東全体に広まる。
イスラエルは、攻撃はハマスのテロを制圧するためと主張する。しかし、今回の流血はイスラエルによるハマスの軍事部門司令官の暗殺から始まった。
イスラエルの新聞には、殺害されたハマス幹部は、昨秋のイスラエル兵士の釈放交渉で中心的な役割を果たし、さらにエジプトが仲介しているイスラエルとハマスの停戦協議でも要にあったというイスラエル関係者の証言が出ている。
事実であれば「ハマスの軍事司令官=テロリスト」というイスラエルの主張は崩れる。
イスラエルは来年1月に総選挙を控えている。4年前の攻撃も総選挙の前だった。軍事危機をつくりだし、国民の不安をあおって支持を取りつけようとする政治的な意図があるならば、とんでもない話である。
今回、アラブ諸国の対応が早い。エジプトが即座に首相をガザに派遣し、アラブ連盟は緊急外相会議を開いた。ハマスに影響力を持つエジプト、トルコ、カタールの首脳もカイロで協議した。アラブの外交団のガザ入りも予定されている。
「アラブの春」によって強権体制が倒れた国々の風通しの良さを感じさせる。一方で、イスラエルに影響力を持つ米国や、国連の対応が遅い。
必要なのは、米国や安保理、アラブ諸国、欧州などがかかわり、イスラエルとガザのハマスの関係を正常化することだ。
イスラエルによるガザの封鎖は07年以来、続く。産業は荒廃し、失業が広まり、医療は崩壊している。密輸トンネルを通じた武器の持ち込みも盛んだ。
封鎖を解除しないまま、ガザの人々に将来を見すえた建設的な対応を求めることには無理がある。双方が危機を繰り返す悪循環から抜け出すために、国際社会の関与が必要だ。