HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 19 Nov 2012 00:21:09 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:運転と病状申告 偏見をなくす努力こそ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

運転と病状申告 偏見をなくす努力こそ

 免許の取得や更新で、車の運転に支障を来す恐れのある病状の申告を偽った人に新たに罰則を科すなど、警察庁は制度を見直す方針だ。重大事故を防ぐのが目的だが、最善策といえるか疑問も残る。

 栃木県鹿沼市で昨年四月、持病のてんかんを隠していた運転手のクレーン車が暴走、登校中の小学生六人を死亡させた。発作による惨事で遺族らが今春、免許制度見直しを国に訴えていた。これをきっかけに警察庁の有識者検討会が提言をまとめた。

 見直し案のポイントは▽病状の虚偽申告に対して罰則を新設▽運転が危険な患者情報を医師が任意で届け出られる−の二点。

 病気の人らによる大事故は依然後を絶たない。事故の危険を未然に防ぐ観点から、申告時の罰則といった強制力の導入は必要な手段ともいえる。ただし、それが確実に事故抑止につながるのなら。

 見直し案について遺族らは「罰則の中身次第で抑止力は違ってくる」と、罰則のレベルや施行後の検証にも目を向けたい考えだ。

 一方、日本てんかん協会は、罰則や医師の通報制度に慎重な対応を求めた。この病気への偏見が根強いとの思いからだ。大事故が続いた後、協会が緊急調査を始めたところ、てんかんという「病名」だけで解雇、給与減を伴う配置転換、内定取り消しの事例が集計途中ですでに十数件に上る。

 愛知県内の大学病院の専門医もこう話す。「来院患者は間違いなく減る。事故の危険がかえって増すかもしれない」と。国内のてんかんの患者は推計約百万人。症状は千差万別だが、病気と真剣に向き合い適切な治療と自己管理を怠らない人が大半だ。だが免許がないと、雇用難の今、内勤ですら就労に不利でもある。地方では日常生活もままならない人もいる。

 事故を起こすのは、ごく一握りの不心得者だ。そんな加害者への厳罰はむろん必要だが、同じ病名だからと、ひとくくりに論じることは、やはり危うさを伴う。

 提言通りに改正道交法が成立しようと、遺族もいうように事故抑止の検証をしっかりやってもらいたい。正すべき点は見直しを求める。制度の啓発、免許を取れない患者の社会参加への支援など方法はさまざまあるのだから。

 運転中に危ない症状が出る恐れのある病気は、てんかん以外にも脳、心臓、精神疾患など数多く、誰もがなりうる。だからこそ病気への理解を深め、社会が偏見をなくす努力を怠らないでほしい。

 

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