大店(おおだな)のお嬢さんに婿に入った亭主が三人続けて若死にした。出入りの八五郎から話を聞いたご隠居が思案する。店は番頭が切り盛りしていて、亭主はたまに帳簿を見るだけでよい。暇を持て余し、めっぽう器量のいい奥さんといつも二人っきり…。「そりゃ短命だろう」▼落語の艶笑噺(ばなし)「短命」は、ご隠居の解説がのみ込めない八五郎のとぼけぶりが面白い。家に帰って女房と飯を食う八五郎が「やっぱり俺は長命だ」とつぶやくオチだ▼新党が乱立する中、「太陽の党」は短命だった。旗揚げから四日しかたっていないのに、共同代表の石原慎太郎前東京都知事は「日本維新の会」の代表になり、太陽は昇らないまま沈んでしまった▼気の毒なのは「減税日本」代表の河村たかし名古屋市長だ。石原氏と共同会見して合流を発表しながら、一夜でほごにされた。維新の会を率いる橋下徹大阪市長との一体化に懸ける石原氏には、河村氏との信義は取るに足らないことなのだろうか▼原発や消費税の増税、環太平洋連携協定(TPP)など、大きな隔たりがあった政策を石原氏が譲歩したとはいえ、合流ありきの野合批判は免れないし、若々しい維新の会のイメージからタカ派的部分が突出した。橋下氏にとっても大きな賭けだ▼第三極の核は長命か、短命か。長生きすれば、国会で憲法改正のけん引役的な存在になるだろう。