HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 16 Nov 2012 22:21:05 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:中国・習体制が発足 カリスマなき大国よ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

中国・習体制が発足 カリスマなき大国よ

 胡錦濤氏から習近平氏への中国トップ交代の成否は、政治改革の実現にかかっている。カリスマなき時代だからこそ、大胆に踏み込んでほしい。

 まず、胡氏の十年を振り返ってみよう。

 国家副主席として一九九八年に訪日した。爽やかな印象は、新時代を予感させるものであった。

◆政治改革待ったなし

 訪日を前に胡氏は、北京の人民大会堂で、日本の特派員らとの会見に応じた。大会堂の床には、この内側に入ってはいけないという印のテープが張られた。それ以上の厳重な規制はなかった。

 姿を見せた胡氏は立ったまま、笑顔で当意即妙に質問に答えた。中国要人の会見で必要だった事前の質問通告はいらなかった。

 歴史問題だけでなく、「前人の業を引き継ぎ、前途を開拓する重要な時期だ」と述べ、未来志向の日中関係に期待を表明した。

 その胡氏が二〇〇二年に共産党トップの総書記に就任。政治改革を訴えた温家宝首相とのコンビは「胡温新政」と呼ばれ、中国国民も将来に希望を見いだした。

 だが、率直に言って、期待は裏切られた。言論統制の緩和などの政治改革は、ほとんど進まなかったと批判されても仕方ない。

 何よりも、中国社会をゆがめてしまったのは、貧富の差の拡大と官僚の腐敗だと指摘できる。

 胡氏は「和諧社会(調和の取れた社会)」をスローガンに掲げたが、残念ながら、その危機感は社会の改革につながらなかった。

 胡氏らしさを発揮したのは、自身の完全引退を決め、長老支配排除へ道筋をつけたことだ。法治にはまだ遠いが、人治から脱却させる前向きな試みと評価できる。

◆新たな安定装置示せ

 では、胡温新政とまで期待された指導者ですら、かじ取りに失敗した原因は何だろうか。

 新中国の歴史を振り返れば、第一世代の毛沢東や第二世代の〓小平のように、カリスマの鶴のひと声で社会を動かせた時代ではなくなったことを指摘できる。

 その上で、習近平氏が率いる中国を考えてみると、見えてくるものと、不透明なものがある。

 はっきりしているのは、第三世代の江沢民政権以降、「総書記は絶対的権威ではなく、最高指導部の一代表になった」(中国筋)という支配構造の変化だ。

 それゆえ、江、胡政権は、権力と富を握った既得権層の岩盤を突き崩すことができなかった。

 江政権は、資本家の入党に道を開いた。それは、腐敗幹部が党員のままで企業を私物化し富を得る抜け道となるものでもあった。

 それでも、国民が共産党の指導を受け入れてきたのは、党が経済成長という果実をもたらしてきたからであろう。

 だが、今や、腐敗と格差への民衆の怒りは限界を超えようとしている。中国が〇五年に年間約八万七千件と発表したデモや暴動は今や十九万件に迫るといわれる。

 中国では、「裸官」批判が渦巻いている。いつでも海外に逃げ出せるよう家族を海外に移住させ、単身残った大陸で得た汚れた金を送金する役人のことである。

 もしも指導層が社会の発展や安定に責任を持たず、保身と金もうけばかりを考えているのなら、党や国の将来は明るくはない。

 党大会で、胡氏が腐敗について「この問題が解決できなければ、党は致命傷を負い、ひいては党も国家も滅亡する」と強調した。その問題意識は、誠に正鵠(せいこく)を得ている。明らかなのは、習指導部がそんな待ったなしの崖っぷちで船出したことだ。

 目をこらすべきは、習政権が経済成長に代わる安定装置を国民に示すことができるかどうかだ。

 不公平感をなくすため大胆に政治改革に踏み込むしか、安定は保てぬだろう。これに失敗すれば「一党独裁体制は崩壊する」(元中国紙記者)との見方すらある。

 言論や報道の自由を進めることが改革への一歩になろう。政治決定やリーダー選びの過程を透明化することは、薄熙来事件のような権力闘争による混乱を減らすことにもつながるだろう。

◆紛争は話し合いで

 対外的には、党大会で打ち出した「海洋強国の建設」は周辺国との摩擦を高めかねない。胡政権は「平和台頭論」を唱えたが、その末期には大国意識をむき出しにした強引な海洋進出が目立った。

 尖閣問題をはじめ、領土主権をめぐる争いは平和的対話でしか解決できないことを、習指導部はあらためて肝に銘じてほしい。

 習氏の父、習仲勲元副首相は開明派として知られ、習氏は党、政府、軍に知己が多いといわれる。

 カリスマなき時代。その人脈と調整力を生かし、国際社会で尊敬される大国を目ざしてほしい。

※〓は、登におおざと

 

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