HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 48738 Content-Type: text/html ETag: "a39e8d-33f6-a2774c40" Cache-Control: max-age=4 Expires: Wed, 14 Nov 2012 23:21:05 GMT Date: Wed, 14 Nov 2012 23:21:01 GMT Connection: close
大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去90日分の社説のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。
|
あす16日に衆院を解散する。
野田首相が、自民党の安倍総裁、公明党の山口代表との党首討論で表明した。
総選挙は来月4日公示、16日投開票の日程で行われる。
私たちは首相の決断はやむを得ないものと考える。
社会保障と税の一体改革関連法をめぐり、自民、公明両党の党首と「近いうち」の解散の約束を交わしてから3カ月。首相がその約束をなかなか果たさないことで野党の不信を招き、政治の動きはほとんど止まったままだった。
ぎりぎりまで追い込まれる前に、解散に打って出る。そのことで政治を前に進める契機をつくりたい。そんな首相の思いは理解できる。
首相は党首討論で、「16日解散」の条件として、赤字国債発行法案と衆院の選挙制度改革法案を、今週中に成立させることを求めた。
■違憲状態下の選択
民主党がきのう国会に提出した選挙制度の法案は、最高裁に違憲状態と指摘された「一票の格差」是正のための小選挙区の「0増5減」と、国会議員が身を切る姿勢を示す比例定数の40削減が盛られている。
「0増5減」については自公両党も異存がない。
一方で、比例区の削減には野党各党の足並みがそろう見通しはない。
ならば、定数削減は来年の通常国会で実現する。それまでの間は議員歳費をカットして身を切る覚悟を示す。そのふたつを確約してほしい――。首相は安倍氏と山口氏にそう迫った。
自公両党は、この提案を受け入れた。赤字国債発行法案とあわせ、今国会では最低限、「0増5減」法案を成立させる必要がある。
そのうえで、各党にしっかりと自覚しておいてもらわねばならないことがある。
違憲状態下のきわめて異常な選挙を、有権者に強いるということである。
解散までに「0増5減」法案が成立したとしても、次の総選挙はいまの定数配分のまま行われることになる。具体的な選挙区割りと周知期間に、少なくとも数カ月はかかるからだ。
このまま次の総選挙が行われる結果、裁判になれば「違憲判断」が下る可能性がある。選挙の一部無効が宣言され、やり直し選挙が迫られるという見方も出ている。
つまり、新たに選ばれる議員は、民意を正しく反映しない選挙で選ばれるのだ。さらにいえば、次の政権はそうした議員たちによってつくられるということでもある。
そんな政権は正統性を欠く。そう批判されても仕方がないのである。「違憲状態の選挙に投票はできない」と投票をボイコットする有権者が出ても、不思議はない。
この事態の深刻さを、各党はかみしめるべきだ。
■公約に抜本改革盛れ
野田政権がすでに政治を前に進める力を失って久しい。
今の政権に、格差を是正した新制度での選挙が可能になるまでの数カ月間、仕事をせよというのは現実的ではない。事実上の「政治空白」を続けることになるからだ。
違憲状態の選挙は、今回で最後にする。次からはきちんと正統性の担保された選挙をする。
悩ましいが、今回はそうした次善の選択もやむを得まい。
各党に求めたいのは、マニフェスト(政権公約)に、選挙の正常化に向けた具体策を盛り込むことだ。
まずは人口に比例して議席を割り振る小選挙区の選挙権の平等を、どう確保するか。
衆参両院の役割分担を踏まえた抜本的な制度改革は、首相の諮問機関の選挙制度審議会に議論をゆだね、その結論に従うことも明記すべきだ。
■次の政権の使命問え
総選挙が一気に間近に迫ったことで、各党はマニフェストづくりを急ぐことになる。
項目の羅列だけでは困る。次の政権の使命は何か、メリハリのついた争点を示すことだ。
首相は党首討論で、自民党政権時代の原子力政策や膨れあがった財政赤字を「負の遺産」と批判した。
「2030年代の原発ゼロ」を掲げた脱原発や、公共事業のあり方の改革を争点に訴えていくということだろう。
ならば民主党はこの3年の反省をふまえ、財源をふくめ現実的で説得力のある工程表を今度こそ示さねばならない。
その責任は野党も同じだ。
たとえば「民間投資をふくめ10年間で200兆円」の国土強靱(きょうじん)化を公約の柱に掲げる自民党も、財源を具体的に示してもらわねばならない。
衆参の「ねじれ」をどう克服し、政治を前に動かすかの具体策もぜひ聞きたい。
「第三極」を名乗る各党もふくめ、活発な政策の競い合いに期待する。