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大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去50日間分の天声人語のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。
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もう立冬は過ぎたけれど、中国の古い詩をひとつ思い浮かべた。〈秋風(しゅうふう) 蕭蕭(しょうしょう)として 人を愁殺(しゅうさつ)す〉と始まる。秋の風がひゅーひゅー吹いて、人を愁いに沈ませる、と。そのあと〈座中の何人(なにびと)か 誰(たれ)か憂いを懐(いだ)かざる〉などと続いていく▼この秋風を「解散風」に置き換えると、民主党議員の胸の内に思いがいたる。政界はここにきて、いよいよ風が吹きだした。だが、野田内閣の支持率は本紙調査で2割に届かない。加えて党が再分裂含みときては、誰か憂いを懐かざる、となろう▼片や、解散を引き出したい自民党は「北風」から「太陽」に転じた。審議拒否といった強硬策ではなく、赤字国債法案などに協力して環境を整える。風で吹き飛ばすより、温めて上着を脱がせようという策が、じわりと効いてきたようだ▼夏以来このかた、「近いうちに解散」の「近いうち」をめぐって不毛な反目を見せられてきた。内外順風の時ではない。民意を問う仕切り直しがずるずる延びては、国の舵(かじ)取りもままならない▼今の政治を、戦前の2大政党時代になぞらえる人が多い。民政党と政友会は党利党略の争いを繰り返した。首相はころころ代わり、閉塞(へいそく)感から民心は政党を離れ、軍部が政治を牛耳ってしまう▼決められない政治は苛立(いらだ)ちをもたらす。だが、威勢よく決めればいいものでもない。よく決めて、ほどよく立ち止まる。そんな熟思の政党がいい。気を取り直し、あらためてポケットの一票を研ぎ澄ます、この歳末になりそうだ。