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大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去50日間分の天声人語のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。
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むかし中国の裁断師は、高位にある人の服は、前を長くして作ったそうだ。逆に、退官した人の服は前を短めにした。高位の人は胸を張って、そり身になる。だが失脚するとうつむき加減の姿勢になるから、それぞれに合わせて布を裁ったのだという▼風刺の利いた俗話だろうが、4千年の王朝権力史が頭をよぎる、中国共産党の人事の暗闘である。習近平氏を次期トップに、誰が権力中枢で「前の長い衣」を着るのか。名うての中国ウオッチャーたちも見通すのは至難らしい▼胡錦濤国家主席は引退後の「院政」を画策するが、それを前国家主席の江沢民氏が抑えにかかる。高官の子弟グループ「太子党」も野心全開、あれこれ動いて抜擢(ばってき)を狙っていると伝えられる▼交渉などの密室を英語でスモークフィルド・ルームと言う。「たばこの煙が満ちた部屋」のニュアンスは隠微な権力争いにぴったりくる。国民総参加だった米大統領選と、大きな落差を感じる人もおられよう▼そして、権力は腐敗するという格言どおりの汚職がはびこる。庶民の間に「幹部の四態」なる戯(ざ)れ歌があるそうだ。「午前は車であちこち/昼はお皿がぐるぐる/午後はサイコロがころころ/夜はスカートがひらひら」(『笑う中国人』から)▼内に腐敗と格差への不満を抱え、外には強面(こわもて)の膨張主義で押してくる。共産党独裁にして資本主義を疾走する大国が、この党大会でどう舵(かじ)を切るのか注視したい。論語の説く「遠き慮(おもんぱかり)」が日本の中枢にも欠かせない。